uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力に目覚めた件 10P

「本当に大丈夫? その打ちどころ……とか?」

 

 変なことを言い出した平賀式部さんに向かって野乃野足軽は頭の心配をしてる。それはそれで失礼この上ないが……彼女は気にしてないようだ。

 

「私は野乃野君の方が心配でしたよ。震えてたし。流石にこの時期の海に入るのはやめておいたほうがいいかと」

「それは……わかってるよ。忠告ありがとう」

「どういたしまして」

 

 野乃野足軽は平賀式部に別に海に入るつもりなんてなかった――と言おうと思ったが、それだとなんであんなことをしてたのかを説明しなくちゃいけなくなると思って、そういうことにしておいた。超能力のことは誰にも言うつもりはないみたいだ。

 

「それにしても……どうして平賀さんはここに?」

 

 ここは地元からそこそこ離れてるし、電車で2時間くらいはかかる。放課後からこんなところまで来るなんて……早々ないだろう。既に日が暮れ始めてるし夜の海に女子高生が一人で来るのは危ない。昼間は安全だとしても、日が暮れると海って危ない。いきなり怪しくなる。

 だから疑問しか無い野乃野足軽だった。

 

「ちょっと海を見に来たくなる日ってない? 今日はそんな日だったの」

「そうなんだ」

 

 普通はそこで「何いってんだこいつ?」となるが、日頃から平賀式部は不思議な雰囲気を放ってる。だからこそ、野乃野足軽も「そういうこともあるか」と思った。

 

「それよりも野乃野君はなんでこんなところに?」

「それは……僕も海を見たくなって……はは」

「そっか、じゃあ私たち通じ合ってたんだね」

「うん? まあそうかも」

 

 なんか引っかかったが、女の子と喋ること自体が不慣れな野乃野足軽はそこらへんは気にならななくてスルーした。それにあんまり突っ込むと自分がボロを出しそうだったとういのもある。もしもボロをだしても信じてもらえる……なんて思ってないが、ちょっとは気になってるクラスメイトの女の子に引かれるのは嫌だったんだ。だから受け入れることにした野乃野足軽

 

「昼と夜の間の時間。夕日が沈みゆく海って綺麗で好きなんです。世界が切り替わるような……そんな気がして。普段の日常ではあんまりメリハリが無いから……こういう世界が切り替わってる感覚があるとメリハリがつくっていうか……好きな時間が終わってしまいました」

「そう……なんだ」

 

 普段とは考えられないくらいにスラスラと言葉を紡いでる平賀式部。そんな彼女の言葉に野乃野足軽はついていけてない。とりあえずなんかいっとこう……という感じで同調してる。そう思ってると、立ち上がって平賀式部が野乃野足軽に迫ってきた。

 

「顔色が悪いですよ。帰ったほうが良いです」

 

 平賀式部は自然と野乃野足軽の頬に手を添える。至近距離の距離感。彼女の綺麗な瞳と目があう。暗くなっていく空だけど、彼女の瞳はキラキラしてるようにみえた。

 

「いや……僕はまだ……」

「やっぱり何かやることがあるの?」

「いやいやいや、別に全然ないけど!」

 

 平賀式部さんに追求されそうになって慌てて否定する野乃野足軽。それなら――と今度は手を取って来る平賀式部。

 

「心配なんです。具合悪そうな人を放っておくなんて出来ません。帰りましょう」

「……わかった」

 

 その言葉に……野乃野足軽は頷くしかなかった。