「本当の……本当に? 俺を騙そうとしてるんじゃ?」
(そんな事をしてどうなると?)
「いや……希望を持たせておいて『実は死んでまーす。生き返れませーん』とかやる気なんじゃない?」
(私をなんだと思ってるんですか……)
「いきなり襲いかかってきた敵だけど……」
全くもってその通りのことを言われて、何も返せなくなる水でできた女性。野乃野足軽の言ったことは何も間違ってないからね。実際この女性のしたことはいきなり町中で出会い頭に首を絞められた……みたいなものである。
いやお風呂でのことだったし、実はもっとたちが悪いかもしれない。実は自分にストーカーが居て、それが風呂まで侵入してきて、首しめられた――みたいな? 文章にするとヤバさが際立つ。
(それは悲しい行き違いです。私も生命体と接触するのは初めてだったのです)
「だからっていきなり首締める?」
(それは……すみませんでした。それと貴方がいうアクアという存在も)
「生きてるんなら……まあ……アクアはそのアンタから分離とか出来ないの?」
せっかく自身の力で生み出した存在であるアクアがもう居ないとなるとちょっとさみしい野乃野足軽。だからそんな事を聴いてみた。アクアだってよくわからない存在だったから、もしかしたら……とか思ったんだろう。
(それは無理です。私自身が私の事をよくわかってません。色々と私も不慣れなのです)
「この星そのものみたいなものだって言ってなかったっけ? それなら何億歳とか何では?」
(こんな風に存在を主張したのは初めてですよ。私はただ眺めてるだけだったのです)
「それって……もしかしてあんた……いや貴方様は神様とか呼ばれてる存在では?」
(それはどうでしょうか? 私は生命体に寄り添ったことはありません。私はこの星の意思みたいなものなので)
「それじゃあ……もしかして今の人類にキレてるとかは? 人類が増えすぎて星を滅茶苦茶にしてるから出てきたとか……」
(人類はそんなに増えてましたか? キレてるとはなんですか?)
「ああ……いや、物語ではよくある設定なんだけど……」
なんか別段彼女は人類に対してヘイトもたまってなさそうだった。ちょっと自身の中でワクワクする質問をしてた野乃野足軽だけど、ちょっと拍子抜けした。どうやら野乃野足軽は人知れず人類の危機を救ってみたかったらしい。
まあけどそういう妄想は男の子なら一度はやるだろう。野乃野足軽も例外ではなかったと言うことだ。