「あがああああ……ぐがああああああああああああああああ!!」
体のなから色んな物が戻ってくる。口から吐き出したそれはもうただの液体だった。何度も吐いたから既に胃は空っぽだった。体の中で何かが這い回ってるかのような感覚。そして腕が勝手に動きだしたり……頭の奥から変な声が聞こえたりもしてる。それに耐えられなくなったら……きっと意識を手放すのだろう。体の奥から何かが若き上がってきてて、体をメチャクチャ苦に壊してく感覚……それは確かに恐怖だ。
自分がまるで自分ではない何か浸食されてるかのよう。だが……これを授けてくれたのは勇者だ。自分的には魔王なら我々を食らうつもりなのかと思ったりもしたかもしれないが、勇者はまだ信頼できる。この世界の人々か世界を変えないといけないといったその意味も納得出来る物だ。
「くはははは! これが勇者様の力。聞こえますぞ! 天上の声が!! 任せてくだされ!! 儂が……儂が皆の仇をとってみせますじゃ!!」
そんな声がもうろうとする意識の中聞こえた。それを言ってるのは勇者達を崇拝してる爺さんだ。このジャルバジャルの最後の生き残りとも聞いてる。なるぼと……ここで誰よりもその力を求める理由がある奴だ。あの爺さんは骨が見える程にガリガリでしわしわだ。だがどうだ? ぼやけてる視界にも分かるほどにあの爺さんが変わってきてた。骨と皮だけだった体に肉がつき始めてる。そして肉がついただけではなく、身長まで伸びて筋肉はより発達していく。同時に髪も髭も伸びたのか、長くなったそれらが乾いた風になびいてる。
「すごい……全盛期以上の力を感じますじゃ。いや、感じる……これなら……借りるぞ」
気絶してる奴の懐から剣を一つ借り受ける爺さんだった奴。
(なにか……太い音がきこえる)
ドッドッドッドッドッドとこっちにまで響きそうなその音。それが何なのかは分からないが、次の瞬間、赤い軌跡と共に彼の姿が見えなく成った。
『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
それは一瞬だった。俺達が幾ら頑張っても傷一つつけれなかった砂獣の外殻……それを通り越して、爺さんだったそいつは一刀の内に切り伏せた。そして倒れる砂獣を背に彼はこちらを向いた。まるで自分たちがその姿を見てると分かってるかのように。
「何をしてる? 勇者様が授けてくださったのだ。我らにこの世界を変える力を!! 立ち上がれ!! 失望させるな!! 我らの世界は、我らの自信で勝ち取るのだ!」
そう言って爺さんだった奴は砂獣の群れに突っ込んで行く。強い……確かに彼は強く生まれ変わった。だが、一人では無茶だ。そう、自分たちが行かないと!!
「うおおおおおおおおお!!」
自分は必死に体を持ち上げる。すると他にも同じようにしてる奴がいる。一人じゃない。そう思う今の自分たちに賞金稼ぎも軍人も変わりは無い。皆が今、この世界の為に立ち上がろうとしてるんだ!!