砂獣は成長を……いや、進化と呼ぶべき速さをみせてその力を高めている。それも違うか。力は元からあった。ただあの砂獣がその使い方を分かってなかった。実際普通の砂獣ならその巨体を使って力で圧倒するだけで良い。それが一番効果的で効率的だからだ。硬い外皮に守られて、大きなな巨体で有無を言わさずに踏み潰す。それがシンプルで……そして一番の脅威だったからじゃ。
だが人型となると、その質量をただぶつけるだけの攻撃は効率的とは言えない。だからこそ、その力を今まではただ持て余していた。でも……奴は成長してる。人型の体の使い方を分かってきてる。そして人にはない、砂獣でしか持ち得ない特徴までも得て、その力の発露を高めてきた。そもそもが腕二本、足二本では砂獣の有り余った力を使うのにはたり得なかったんだろう。だからこそ、更に手を増やした。
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
皆が砂獣を取り囲んで攻撃をし掛けてる。賞金稼ぎと軍隊という違いは有る物の、今回始めて組んだ訳ではない。なにせ砂獣の被害は多い。賞金稼ぎも軍隊も協力し合うことはある。だからこそ、連係だってそれなりに上手くはいってる。賞金稼ぎは軍隊の足並みを崩さないようにするし、軍隊は賞金稼ぎの自由な行動の邪魔にはならないようにする。統制された動きと、そうじゃない自由な動きが組みあわさると案外やっかいな物だ。
まあそれもこのレベルで組み合わされれば……だが。何せ今は勇者様の力によって我らは限界以上の……それこそ血浄以上の力を得てる。それがおおきい。それがなければ、ここまでの動きは無理じゃ。だが……それでもあの人型砂獣には届かない。寧ろ離れて行ってる感覚がある。それはきっと皆が懐いてる感覚だろう。
相対すれば嫌でもわかる。ワシらも伊達にこの世界であらごとをやってきたわけではない。我らは確かに力を授かった。だかそれでも離されていく。これが都市核の力なのかも知れない。この危険な世界で人が住める場所を提供してくれるだけの力。だからこそ、敵の手に渡ったら恐ろしい物になってしまう。
「ぬぐううううう!!」
奴の攻撃は鋭さをあげて行ってる。既に反応が出来なくなってる者も居る。だが勇者様の籠のおかげで直接受けなければ死ぬことはない。じゃが……
(このままでは全滅も時間の問題か……)
そう思いつつチラリと勇者様と魔王様を見る。魔王様は今にも助力に来てくれそうではある。
(何を考えておる!!)
儂は自分の心の弱さに気付いた。最終的にあのお二人がいる……そんな考え。それが弱さではなくてなんというのか!! 大見得切った割には結局の所はあの方達を頼りにしてる。それではダメだ。確かにあのお二人なら、この砂獣にも勝てるであろう。その確信は揺るぎない。じゃが……それでどうなる? あのお二人に……いやジゼロワン様も入れてあの方達にこの世界を救って頂くのか?
この手に力を再びもたらしてくださったのに……それを無駄にするのか? 自分たちで全てをやるのなら、我らなどにこんな力を与える必要は無い。あの方達は我らの事を思ってこの力をくださったのだ。その力が……あんな砂獣などという化け物に劣ろう物か?
「そんなわけはないじゃろう……のう」
儂は信じておる。与えられた力はきっとあやつを倒せるだけの物であると! そしてそれをセーブしてるおるのはきっとこの肉体。なら……僅かでも良い。短時間でも良い。この力を全て引き出せれば良い。体など……死なずば後でどうとでも成ろう物!!
「限界を超えろ皆!! 恐れるな!! 我には奴を超える力がある!! 勇者様を信じるのじゃ!」
儂はそう叫んだ。