「勇者様！！」
そうローワイヤ様が叫んでる。けど、さっきから勇者様は微動だにしてない。何か……何かとても嫌な予感がする。一体何が起きたのだろうか？ 私たちには勇者様がその圧倒的な力であの中央協会の人たちを追い詰めていたように思う。
私たちこの世界の者にはとても恐れ多い中央教会の人々。彼らには圧倒的な権限とそして信頼というかそう言うものがしみ込んでた。だから楯突くだけで膝が震えてくるほどだ。
だって私たちの信仰の対象なんだから。彼らの声に耳を傾けて、私たちはそれを心の支えにして生きてきたといっても過言じゃない。彼らと事を構えること……それはこの世界での死に等しい。けど、ここにいる私たちはすでに彼らには対して疑惑が生まれてしまってる。
それは勇者様のおかげだ。勇者様が正しさをその姿で示してくれるから、私たちには疑問が生まれる。誰ももうこの世界の人たちは中央協会に言い返す……なんてこと自体ができなくなってる。だからこそ、私たちには彼が必要なんだ。
「勇者様！ 動いてください！！」
私もローワイヤ様の後ろからそういうよ。そして私に続くように、ほかの人たちも勇者様へと声を投げ掛ける。でもなぜか優しいはずの勇者様は反応してくださらない。いつもなら、優しいく頼もしい笑顔に、心を穏やかにしてくれるような声を出してくださるのに……フェアにその声をもう一度……もう一度聞かせて安心させてください。
「無駄じゃ。確かにそやつは大きな力を持ってたようじゃが、心は我らとそう違いはないようじゃ。ならば……この心を食らう砂獣によって、食われつくすだけ。残るのはただの人形じゃ」
「バンドゥン！ なんてことを……」
「そんな……そんなことって……」
ローワイヤ様が老子バンドゥンと呼ばれる豪華なローブを被った人をにらむ。その手には勇者様を襲ってると思われる砂獣を操ってるであろうシンボルがある。多分だけど……でもあれを取り出した直後に勇者様の様子はおかしくなった。
それに私たちにも二人の会話は聞こえてた。疑いようはない。
「旦那はそんなことくらいでやられるような玉じゃねーよ」
「玉じゃないとはなんですか？」
「え？」
お上品なお嬢様のローワイヤ様には賞金稼ぎの粗野な言葉は時々伝わらない。なのでキョトンとしてる。この状況だからスルーしてほしかった。玉とか言った賞金稼ぎの人も、ローワイヤ様にどう伝えたらいいのか困惑してる。
「ふん、精神を鍛えるなど不可能じゃよ。だからそいつはもう終わりじゃ」
確かに精神って何かよくわからない。砂獣なんかに精神を攻撃されたら……簡単に壊れそうなきもする。
「すみません」
私は小さな声で賞金稼ぎの一人の裾を引いて気をこっちに向ける。そして顔を近づけて耳の近くでこういった。
「あのシンボルがきっと原因です。どうにかできないでしょうか？」
ここで何か行動を起こせるのは賞金稼ぎの皆さんだけだ。なら彼らに頼ることしかできない。私の言葉にその人は深く考えてる。そしてもう一度こっちを見て「やってみよう」と言ってくれた。
