uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 258

 老子バンドゥンの持つ不気味なシンボル……いや、私から見たらとても高価そうで恐れ多いそれがきっと勇者様をおかしくした原因だろう。
 私たちはこれまで、勇者様におんぶにだっこだったと言わざる得ない。あの方の力に頼ってここまで来たのは疑いようもない事実だ。実際この賞金稼ぎの人たちはもっと役に立つと思ってた。彼らもきっともっと活躍の場があると……思ってたはずだ。
 
 確かに道中は彼らが案外活躍してくれていた。勇者様もサポートに徹していたしね。けど、道中とここ中央は全く違った。中央は確かに私たちが思い描いてた夢のような街だった。私が知ってる町とは全然違う。けど、その闇もまた、自分たちが生きてきた場所とは深さが違う。
 
 人が砂獣へとなり、そしてそれをまた人が使役してるなんて……ただ理不尽のような暴力の権化……それが砂獣だと思ってた。けど、ここ中央のやつらはそれを使ってる。一体どれだけ、砂獣が私たちを脅かしてきたかの……それを知らないわけはないのに……こんな術があるのなら、もっと町に被害を出さないようにする術だってあるんじゃないの? 
 
 そんな疑問が起きる。たくさんの人が砂獣によって不幸になってるんだよ? 私だって……砂獣に殺されそうになった。思い出そうとすると、とても頭が痛くなる。勇者様はそれはきっと人としての防衛本能だと言ってた。
 
 あまりにも辛すぎる出来事とか、耐えきれない恐怖を味わったから、私の頭はその時のことを思い出すのを拒絶してるんだろうって……でも時々頭に浮かぶし、寝てても、あの時の悪夢を見て、汗だくで目覚める時だってある。
 
 ピローネと呼ばれてた子供が使役してた小さな砂獣、あれだけでも私は震えが出てた。そんな人たちはきっといっぱいいるよ。今ならわかる、この人たちはそんな私たちを救ってくれる気はないって。私たちに、この世界に必要なのは、勇者様のような人だ。だからこそ、戻ってきてください。
 
「どうして、私は捨てられたの? 答えてくれる? バンドゥン」
「簡単なこと、ローワイヤ、貴女は超えられなかったからですよ」
 
 超えられなかった? よくわからないことを言ってるが、ローワイヤ様はそれが何のことかわかってるのだろうか? でもああやって会話で時間を稼いでくれてる間に、前で勇者様へと声をかけてる集団からわずかに後ろに引いた賞金稼ぎの人が狙いを定めてる。
 弓とかではない。さすがにそんなの持ち出したら、周囲にいる中央協会の人に気づかれる。だからあくまでも手元で隠せる程度の物を持つ。
 それは荷物の小物でもいいし、この広場に落ちてる石で もいい。ちょうどペニーニャイアとかいう人の屋敷の瓦礫の破片とかあるし。
 
「やっぱりあの定期的にしてた血液検査って……そういうことなの? 私たち巫女の体に老子会は何をやってるっていうの?」
「この際です、冥途の土産に教えてさしあげましょう」
 
 どうしよう……なんかみんな話の方に意識が……だって結構大切なことを言おうとしてない? とりあえずここだけ聞くか? それともっ――て感じで視線が交錯してる。