遠い日の記憶。自分は誰かに……こんな話を聞かされたことがあった。
『その人がね、私達を守ってくれたのよ。どんな砂獣にも果敢に立ち向かい、そして必ずその首をはねて私達を守ってくれた存在。彼がいるからここは安全なの……何も心配なんてする必要ないの。だから……ね。おねんねしましょ」
その昔、ここらには英雄が至って話しは時折聞く。今でも凄い奴は何人かその名前をとどろかせてるが、それでも英雄と呼ばれるのはかつてのその人だけだった。今から五十年位前なのだろうか? 確か砂獣の大規模な攻勢が合ったのだ。それはまさに世界さえ砂中の味方をした世界の終わりの時――と呼ばれる程に絶望的な日々だったと語り継がれてる。砂が足下だけじゃなく空まで多い、視界が悪い中、砂獣の大攻勢は始まった。その時に、沢山の街が砂の中へと沈んでいった――と。
これでこの世界も終わり……誰もがそれを覚悟した。けどその時、一人の剣士が砂獣を倒し尽くして、その終わりの七日間と言われてる時を乗り切った。この世界の誰もが知ってるその話。自分は今、その話を思い出した理由が分からない。
賞金稼ぎとして今回のジャルバジャルの都市核奪還に参加した。それはこの作戦に勇者さんと魔王さんが参加するからだった。そうじゃなかったら、みすみす死にに行くようなこんな依頼を受けるはずがない。それなりに自分たち賞金稼ぎは自分たちで街とかを守ってる自覚はあるが、流石にその命を簡単に投げ捨てるような真似は出来ない。それは普通の事だろう。だから本当なら砂に埋もれた街なんて誰も行くわけがなかった。なにせ落とされた街には大量の砂獣がいるのは確定してる。死にに行くような物だ。
でもそこに魔王さんと勇者さんが加わる事で風向きが変わった。言い方悪いが、おんぶに抱っこできるそれなりに安全な仕事になるのでは? 的な思惑で集まった。まあ自分は単純に彼等、魔王さんと勇者さんの事を間近て見れると思って来た口だ。だが……その二人よりも今、気になる存在が目の前にいる。華麗なる剣裁きで砂獣の体を切り刻むその姿。そして全体を把握してる視野の広さ、皆のことを思って指示を出すその雄志。
自分たちも勇者差のおかげで強化された。死ぬような思いをしたんだ。比較的に……それこそ血浄でもなしえないパワーを得てる。だが……だけどそれでも……天狗になることなんか誰一人で着なかった。なにせ自分たちよりも確実に強いであろうその人が必死に戦ってる。強さを手に入れる度に分かる。向かい合えばその相手のことが。だからこそ、自分たちは言葉もなく、彼の後ろについたのだろう。
その人は、勇者でも魔王でもない。英雄だ。本能がそう言ってる。勇者さんや魔王さんのほうが彼よりも強い事は確実だ。けど……自分達はかつての英雄と戦えることに胸が沸き立っていた。