砂獣がズンジャイサンバから逃げ出した人達を襲い出す。幾ら逃げようとも、砂獣は大きい。歩幅の差でどうしても追いつかれる。それこそ馬にでも乗ってないと……だけど、馬程度では結局追いつかれるから一緒である。私の下では地獄が起きてる。
「どう?」
『やはりアレは……力の波長がさっきの騎士に宿った物と同じです」
「ふむ……まあだと思ったよ」
どうやらあの砂獣、生み出したのは世界ではなくさっきの鎧の騎士みたいだ。砂獣の力の波長がさっきの鎧の騎士に取り込まれた力と同質なのだ。まあ流石に人の姿で人を襲う……っていうのは不味いからじゃないかな?
「このまま殺し付くのかな? 流石に一人くらいは助けておいて、奴らの悪事をバラすかな?」
まあ実際、録画してるし、証言者がいるかと言われると……ね。でも遡ってはわからないからね。流石のG-01も時間を遡る事は出来ない。だから彼等の事情なんてのが私はわかってない。ただ、一つの側面から見ただけで「こいつらサイテーな事をやってるぞ!」と余計な事をしようとしてるだけだ。まあでも流石にこの光景が正しいと思わないけど。本当の意味で地獄絵図だし。
『何か着ます』
「うん?」
いきなり砂銃が吹っ飛ぶ。そしてそれに剣を突き立てるのは……さっきの鎧の騎士だった。一撃の下で砂獣を滅ぼしたそいつは、目にもとまらぬ速さで、逃げてる人を食おうとしてる砂獣を側面から再び吹き飛ばす。そんな鎧の騎士に別の砂獣が襲いかかる。だがそれを鎧の騎士は腕一本で押し返した。それを見た民衆の皆さんはその鎧の騎士に希望を抱く。それに応える様に、鎧の騎士が砂を爆発させる様に駆けた。
そして二体の砂獣を一気にその剣で屠った。そんな鎧の騎士に民衆は盛り上がる。そんな光景を見ながら私は思う。
「マッチポンプじゃん」
もうそうとしか言えない。だってあの砂獣はあの鎧の騎士が作り上げた物だ。それを自分で倒して、英雄気取ってるんだよ? 完全なマッチポンプだ。まさかこんな演技をするとは……何が狙いなの? ズンジャイサンバに民衆を戻らせる気なのかな?
「一人くらいは確保しておこうかな」