「何をやってるんだ貴様ら?」
「何者だ貴様!! ここは神聖なる協会の中であるぞ! 我らの許可なく無断で上がり込んでくるとはどういう了見だ!!」
わぁお−−と私は思った。だってさ、一応ジャルバジャルを収めてるラパンさんの息子がこの協会の建物自体をこいつらに与えるのを拒否したんだよ? それなのに今こいつ、なんて言ったよ?
「我らの許可なく」とか「無断で−−」とかさ、完全にもうこの協会の建物自体が自分たちのものであるかのように振る舞ってる。
どういう脳内構造してるんだろうか? 多分それは魔王も思ってる。私が報告して魔王をこの場に乗り込ませたわけだけど、まさかいきなり文句言われるなんて思ってなかっただろう。
大体この街の人たちも魔王がきたら「うわ、ヤベ!」とか言って散ってくからね。そのくらいちゃんと恐れられてるやつだ。
それでいいのか? と思わなくもないが、案外魔王にはついてく奴も多いんだよね。どうやら人の中には高圧的なやつについていきたい奴もいるようだ。私には理解できないけどね。
だからこのジャルバジャルでは魔王にこんな暴言を吐く奴なんていないんだが……こいつらアホみたいだな。
「了見だと? 俺様が俺様の土地に上がり込むのに何か許可が必要だというのか?」
「なんだと? ここが貴様の土地だと? 貴様のような野蛮で下劣なやつが足を踏み入れていいような場所ではここはないわ!!」
あいつ凄いな。ある意味で私は感心してた。なにせ魔王を前にしてここまで言い切れるやつってなかなかいない。どうやらあいつ、相当な馬鹿みたいだ。
実際大馬鹿かそれかめっちゃ強いかの二者択一なんだが、あいつから強者の感覚ってやつがまずないからね。きっと凄いバカなんだとおもう。
「ほう……じゃあどうするんだ? 俺を追い出して見せろよ」
おい、魔王のやつ楽しくなってるんじゃん。その凶暴性が出てるよ。暴れられそうだから、魔王って実はああいう輩が嫌いじゃないんだよね。まあ殺しはしないだろうし、見てればいいか。
合法的に捕らえられるわけだしね。
なにやらローブの一人が一番偉そうなローブの奴に言ってるようだが当然バカは聞く耳を持たない。
「何を言うか、やめといたほうがいい? 我らにはあの方から授かったものがある。こんなどこぞの愚か者に負けるどうりはない。あのクソのような小僧が偉そうにしてるのもこいつの背後に隠れてるからだろう。
ならここでこいつを無きものにすれば……クハハハハ! 一人でこんなところに乗り込んだのを後悔するがいい!!」
そう言って向こうも戦闘態勢バンバンみたい。せっかく忠告した人がいたのにね……上が無能だと下が大変だね。同情はしないけど。
「我ら協会の威厳にひれ伏すがいい!」
そう言って協会の奴らが詠唱に入った。それと同時に何やら薄い膜のようなものが展開される。多分結界的なものだろう。詠唱が終わるまであれで身を守ってるみたい。けど……
「遅すぎるぞお前ら」
魔王にあんな薄い結界が通用するはずがなかった。