「この力は、よもや……」
魔王が作り出したブラックホールを見て、彼はなかなかに驚愕をしてる。その力は実際のところこんな町なんてそれだけで飲み込める代物だからね。
すべてを飲み込むその闇は確かに魂さえも逃しはしないだろう。実際あれに飲み込まれるような現象を前の世界で観察したからね。ここの前の世界は生物なんてほぼいなかったから、いろいろと出来たのだ。まあポニはいっぱいいたが……でも普段は姿現さないし。後はそう……アビスくらいだった。
遠慮なんて不要だったんだ。だからいろいろと遠慮なんてなしに魔王と勇者は組み手――というかただ単に普通にバトってた。いつも魔王が初めて、勇者が仕方なしに付き合う……って感じだったけどね。
その戦いで魔王はあれを出してた。どうやら前はもっと不完全な代物だったらしいが、力が飛躍的に強まり、そして肉体までも変わった今になって完成の域に到達したらしい。
前はブラックホールを作ったらその場で発動してその後はどうやっても止めることも出来なかったらしい。ただその魔法が止まるのを待つしか無いって状況だったみたいだけど、今はそれを投げたりして任意のところで発動したり、それに規模だっていろいろと調整できるようになってる。
魔王はそこら辺の研鑽には余念が無い。自分の力を高めるのが何よりも楽しいって感じらしい。男の子だね? ――と思う。私はG-01を深く知れば知るほどに頭が痛いよ。物理的にね。
まあいろいろと出来そうなことにはわくわくしないわけではない。でも労力がね……ただ感覚でいろいろとやれてしまう魔王と違ってこっちは頭も使ってるから大変なのだ。
「この力の凄さがわかるか?」
「ええ、それは勿論。とてつもないほどに強大な力が内包されて、そしてこの闇は、まさに純」
「ほうほう、なかなか見込みあるではないか!」
そう言ってめっちゃ得意気になってる魔王。どうやら自分のお気に入りであるブラックホールに食いつきがよくて上機嫌になってるらしい。あれか? 自分の得意分野だけはやたら饒舌になるって言う奴か? いやまあ、魔王は普段から別に無口って訳じゃないけどね。ただ普通の人は怖すぎて気軽に魔王に話しかけることが出来ないから、あんまり喋る機会が無いって言うね。
それに二言目には「やるか?」とか言うし。だからこそ自分の力を見てこんな反応をされたのが嬉しかったんだろう。
「ありがとうございます。純な闇の力を持つあなたなら、失敗した我らの続きを出来るかもしれません」
「まあ、我に出来ぬ事など何も無いがな! ガーハッハッハ!!」
めっちゃ調子に乗ってる魔王であった。手かこの人、魔王に何をやらせる気だ? 今のままだと簡単に乗っちゃいそうだぞ。