「まあつまり貴方には私にパーツを渡す気はあるって事で良いんだよね?」
『そうですね。それに関してはあの人にも了承は得ています』
「そうなんだ」
なるほどね。それならば問題はアイだけ……と言うことになるね。ますます戦ってる意味がわかんないね。まあ魔王もちゃんと返す気はあるって最初から言ってれば、アイだってちょっとは耳を貸したかもしれない。
魔王の場合は狙ってたのかもしれないけどね。なにせあいつ、強くなったらその力を試さずにはいられないような奴だ。すぐに勇者と戦いたがる奴だもんね。一回ぶつかって、思いっきり体を動かした後にいらんパーツを渡すつもりなのかもしれない。
そして相手方が本気になってくれるのならそれに越したことは無いから、アイが本気になるように誘導してきた――のかもしれない。けどそんなことをやってるからこんなピンチになってるんだと思うんだけどね。
一応今はどうなってるのだろうか? 私が最後にみた魔王は大ピンチだったけどね。魔王はその神経系を完全に狂わされて地面を這いつくばってたし、そしてあおり倒したせいでアイの奴にトドメ刺されそうだった。
その時に魔王のAIがハッキングしてきて私に接触してきたからそれからよくわかってない。
「とりあえず戦いを止めた方が良いよね。遅いかもしれないけど」
もしかしたら映像を映したらどっちかが死んでる……かもしれない。いや、バイタルはモニタリングしてるからそれはあり得ないけど……緊迫感を演出しようかなって。
『大丈夫ですよ。あの人は殺す気は無いですから』
「寧ろピンチなのは魔王だったと思うんだけど……」
なにせ神経系が全部おかしくなって、どうすることも出来なかったと思う。あれから逆転したとは思えないんだが? とりあえずどういう状況かだけ確認することにした。再びアイに接続してアイの視界を盗み見る。すると、なんか青い空が見えてた。空が見えるだけで魔王は見えない。一体魔王は何処に? とか思ってもキョロキョロも出来ないからね。アイが魔王を捕らえてくれるのを待つしか無い。
でも上を向いてると言うことは上にいるんでは? 太陽の中にいる可能性が高いよね。こう言うのは太陽光を使って敵の視界を塞いでその隙に――ってのが多い。だからそうだと思ったんだけど、あいにくとアイにはそう言うの効かない。普通に見えるはずだ。けどいないね。と言う事は……どういう事? そんな事を思ってると、なんか耳元で――
「我の勝ちだな」
――という声が聞えた。それがめっちゃ近い。もうね……耳元でいってるよ。そして気づく、なんか二人抱き合ってない? 一体何が起ったの!?