魔王とアイの戦いは激化してる。どんどんと様子見状態から、本気の状態へと移行してるからだと思う。そろそろ止めた方がいいかなって思ってるんだけど……果たして止まるのか。いや、一応策は考えて有るよ。私だってバカじゃ無い。
私という立場、それを使えば強制的に二人を止めるくらいはできる。
(うん、出来る筈だよ)
そのくらいの権限はある。なにせ私は立場的には一番上、ピラミッドの頂点にいるのが私である。けどどっちも干渉を避けるために色々とやってるんだよね。アイの奴は言わずもがな……私よりもG-01のシステムって奴を理解してるからね。それで回避策を巡らせてるし、魔王は魔王で私から離れる気だからそこら辺本気で準備してる節がある。
最悪魔王は私が穏便に自分を手放さないかもしれないと言う可能性をちゃんと考えていたようだね。ちゃんと話してくれれば良かったのに……無理矢理に離れたいほどに、私たちの関係性は悪かったのだろうか? そこらへん聞きたいが……既にアイの奴を送ってこんな状況になってると今更私が言葉を尽くしたところで、その言葉が薄っぺらく感じてしまいそうではある。
本当に失敗だったよ。アイに体を用意して任せてしまったことが……ね。あいつがこんなにけんかっ早くなかったら、もっと穏便に出来たはずだ。けどもう二人はぶつかってるからね。取り返しは出来ない。
時間を巻き戻す機能とか有れば……とかおもうけど流石にそんな機能は無い。今は。もしかしたらそんなとんでもない機能とか追加できたりするかもしれないが、流石にそんな非常識な装備はまだ無いからね。
アイの奴は盾や拳での回転を武器に魔王に対応してるけど、そろそろきつそうではある。逆に魔王はどんどんとその攻撃を苛烈にしてる。てか既に魔王はなんか手加減……してるような気もするよ。流石にこのままアイをぶっ殺して私と敵対する……ってのがイヤなんだと思う。だからこそ、アイが諦めるように手加減してる様に見える。
だってさっきから魔王はその力の上限を上げてない。実際はまだまだ魔王の力的には上があるはずだ。でもそれをとどめてる。それって魔王的にはアイに対応するためにはその程度のエネルギーで十分って事なんだと思う。そう判断された。アイにとっては屈辱では無いだろうか? てか魔王も気を遣ってくれてるんだし、そろそろ諦めて交渉のテーブルについて欲しい。
今ならまだ、きちんと話し合いが出来る。けど……どうやらアイの奴は諦めて何て無いみたいだ。アイはずっと計算してる。それが何を示してるのか……私にはもうわかんない。けど、いつものように盾と魔王の拳がぶつかって、その反動も魔王には読まれてるのに、アイは前に出る。いつもと違う行動をとる。
でもそこは魔王も敏感だ。戦闘に対する嗅覚というか、そういう感覚が魔王は優れてる。だからそれにもちゃんと対応する。やっぱりそもそもの戦闘経験の差が大きい。諦めて……とおもうが、アイは諦めれない。
人では出来ないような方向に関節を動かして、足裏のブースターを無理矢理にも使って、攻撃を連続で行う。立場が逆転するような猛攻。でもそれでもクリーンヒットはしない。魔王は上手く対応してる。でも……
「これで良いんです」
なにやらそんな事をアイは言った。