振り出しに戻った。いや、振り出しよりも敵の数が多くなってるから実質は悪くなってるんだけどね! いや、本当に厄介。一体全体どんだけのギミックをこいつらは持ってるのか。もしかしてだけど、宵が終わってこいつらが昼に出てきたとして、こんなことにならないよね?
「こいつらの異様なしつこさは鬼達のおかげだから、もしも昼間に出てきてもこんなに苦戦何てしないよね?」
『さあ、それはとうでしょうね。私たちが相手を理解して研究するように、どうやら彼らは同じようなことをやってるように思えますが……』
「ちょっと、怖いことを言わないでよ」
私はAIのその言葉にブルリと震えた。だってそんなことになったら……頭痛くなる。けど……実際その兆しはあるんだよね。常に周囲に居る鬼達は何かをこねこねしてる。そのこねこねしてるのはどっから取り出してるんだ――と言いたくなるが、ここはきっと奴らの空間だ。言うなれば、この世界全体が奴らの固有結界みたいな? そんな物だと思ってる。となるとなんだって奴らは出来るだろう。だってそもそもが、宵には世界は崩壊してそして再び作られてるんだ。
それだけのことが出来るなら、砂獣を改良するなんてこいつらにとっては朝飯前で……私はさしずめ鬼達にとっての――
「モルモットって訳ね」
――そういうことになる。背後から今度は私を狙って新型サソリ型砂獣の砲塔が火を噴く。私はそれを横に躱した。けどそのとき、かわしたはずの砲弾が直角に曲がりやがった。
「ちょ!?」
私はとっさに腕でガードして難を逃れた。まあけど、そもそもこの程度の威力ではG-01に傷はつけられないけどね。むしろその無数の脚の鎌の方がまだまだ強い。
「うん? 強い? そうか……」
私は思いついてにやりと笑った。本当なら今すぐにでもぷん殴りたいが、ちょっと位置が悪い。挟まれてるしね。既に二体に増えた蛾のような砂獣はその羽を動かして鱗粉を散布してる。催眠やら幻覚やらの作用がある鱗粉だ。まあほとんど私に無意味……いやG-01には無意味だけど、何故か私の平衡感覚狂わしてくるんだけどね。
それにさっきのビームを曲げた仕掛けも気にはなる。ダメージにならなくても攻撃ってとっさに避けようとしてしまうからね。そうなるとその動きを狙われたり予測されたりしてしまう。
挟まれた形だから、無闇やたらと新型サソリ型砂獣の鎌の攻撃は来ないけど、代わりに砲撃が屈折して襲いかかってくる。しかもさっきまでみたいに貯めて一発撃つんじゃなく、拡散するような砲撃をするようにしてるよ。
そんな器用なことが出来るんだね。感心してしまう。しかもその全てがいろんなおかしな動きしてるし。私はとりあえずあくまでも狙いを蛾のような砂獣である……と見せるために何回か、攻めようとしてみせる。その度に棒っきれみたいな砂獣がついてきて阻止される――って事を繰り返しつつ、不意に、背後の砂獣にスピードを上げて接近した。砲弾の雨を降らせてた新型サソリ型砂獣は近くに来た私にその鎌を振り下ろしてくる。けどそれを私は受け止めて、こういった。
「もらったぁぁ!!」
私はその強力な鎌を引きちぎってやった。