両側から鬼の手が迫ってきた。いや、既に私の事をパァァン! とハエや蚊を潰すかのようにたたいてる。それで終わり……とでも思ってるだろう。
これで角を取り返した……そんな優越感に浸ってるだろう。でも――
「なぁめぇぇるなあああああああああああああ!!」
――私はそう言って力んでる。でも腕とかに力を込めてるわけじゃない。勿論込めてないか訳じゃないが、なんかお腹の所にグッと力を込めてる。それでG-01の強度が増したか? というとそんなことは無い。気合いでどうにかできるものじゃないからね。
実際かなりのダメージを受けた。腕はひしゃげてるし、脚もなんかべっこべこだ。つまりは変な方向に曲がって絡んでる。とりあえず痛覚とか色々と緩和してるわけだけど……でもシンクロ率百パーセントだと完全に遮断することは出来ないんだよね。
普通の状態ならそもそもが私の体までダメージがフィードバックされることはないし……これがシンクロ率百パーセントの最大の弊害だ。シンクロ率百パーセントはG-01とまさに一体になる機能だ。
私はこの巨体をそれこそ本当に自由に操れる。でもその代わりにこういうことになるリスクも負う。だから……まあ受け入れよう。それに一瞬で全部潰されなかっただけよかった。
いや自信はあったけどね。何せこれまでの時間でG-01を色々と強化してたし。それに一番堅いのが私の居るコクピットというのはわかってた。そしてここが中枢なのだ。
『自動修復を……いえ、全てを使って開発再生を行います』
AIがそんなことを言った。うん、きっと凄い再生をしてくれるんだろう。異論はない! するとその効果は目に見えてあらわれる。まだ私が生きてることに気づいた鬼が手に力を込めてる。けど、壊れると同時に、いや壊れるよりも早くそのパーが再生する。
いや、これは再生というか転換してるのかもしれない。一瞬で置き換わってるし。でもそれならそのパーツは元から用意されてたというわけで……一体とこに? という疑問が……まあいっか。私は細かいことは気にしない女だ。G-01の体が再生されると共に、私の体も再生されてるわけだけど、こっちは機械のように付け替える……何てことが出来るわけじゃない。
だから簡単じゃないけど、G-01の体が治れば一応痛みはなくなる。それに今はとても体があつい。心が燃えてる……とかじゃないよ。私は出力を上げた。だからその影響だと思う。しかもいつもは押さえてるところをそれを取り払っての全力だ。
実際今の私の体温は40度では効かないくらいになってると思う。そして私の体でそれならばG-01の方はそれ以上なのはあたり前だ。なにせ普通の肉体と機械の体では耐熱温度が違う。その証拠にG-01を押さえつけてる鬼の手から何やらジュワーと言う音が。
「いや、それよりも棒っきれみたいな砂獣の方がわかりやすいかもね」「
何せ棒っきれみたいな砂獣はG-01に組み付いてたんだ。それってつまりは、同じような衝撃をこいつも浴びてたわけで、そしていくら防御力が高かろうと鬼の一撃に耐えられるかというとそれは厳しい。だからG-01と同じようにボロボロになってる。
勿論奴にも再生の手は入ってる。でもそれはあくまで再生で、進化してるわけじゃない。こっちは改良と進化をしてる。そして棒っきれみたいな砂獣が熱に強いかは知らない。
実際かなりきつそうに見えるけど……それでも棒っきれみたいな砂獣はG-01の拘束を解くことはしないようだ。でもそれなら……
「焼き死になさい!」
そうは言ったけど棒っきれみたいな砂獣から火が出ることはなかった。けど、メッチャ熱くなったG-01の体に触れてた奴の足はボロッと崩壊した。
どうやら棒っきれみたいな砂獣では耐えられない温度になったようだ。そしてついに鬼も込めてた力を緩めて隙間を空けた。
「ここだ!」
私は今度こそブースターを噴かせて手とそして棒っきれみたいな砂獣から脱出した。