「結構殴ってると思うんだけど……なんか減ってないような気がするんだけど?」
『疲れましたか?』
「それはないけど……」
私は砂獣べっこべこにしつつ、AIにそんな疑問を投げかけた。いや、こっちもセンサーを強化したし、ちょっと距離を取れば全体を把握できるとは思う。でも今は砂獣達の中心地……というか、私自身が砂獣が集まってるとこに動いてるから近くしか見れないんだよね。それでも全周囲見てるから、後ろからの攻撃とか、なんとか全てかわしきってるけどね。
なんかとても体が軽い気がする。今まで自分は運動音痴と思ってたけど……もしかしたら私自身の体が強化された? 凄く私今冴えてるよ。足掻く砂獣達。でもそれも無意味だ。定番の蟻のような砂獣がその数を持って寄り集まってくるが、私にはただの的のようだ。腕を一回振うとそいつらが百体くらいは吹っ飛んでいく。それでもこいつらは減ってる気がしない。
確実に粉々になってると思うんだけどね……さすがは定番の砂獣だけあるのかもしれない。減らないのがこいつらの強みなのかも……それにこの蟻のような砂獣の影に隠れて、他の形した砂獣達が攻撃を加えようとしてくるしね。でもそれもことごとく踏み潰してる。そもそもちょっと強いくらいの砂獣が鬼さえも倒したG-01に敵うわけもない。
だからそこら辺は全く問題ない。既に砂獣を倒すのはただの片手間……いや作業と言ってもいい。だから苦なんて事無いんだけど……終わりが見えないというのはね……いやちゃんと王様達がアズバインバカラへと入ってくれればそれが終わりだとは思うけど……そこまでもう離れてないはず。
砂獣共のせいで私には確認する術はないけど……
『装置を沢山飛ばしたでしょう? G-01ならそれらに接続してセンサーを拡張することだって出来る筈です』
「ちょ!? そういうことは早く言ってよ!」
『既存の装置に気づきどう活用するかも成長です』
「はいはい、察しが悪くてすみませんでした」
とりあえずそういってAIには謝っておいた。そしてそう言いつつ早速私は周囲にある装置へとアクセスをする。まあけど……本当にどうして気づかなかったのか。こう言う応用力低いところも改善していった方が良いかもしれない。せっかく脳が拡張されたはずなのに、私自身がそれを生かし切れてないよね。やっぱり発想力とか閃きとか……更に言うと応用力とかは元からある地力がある程度影響するみたいだ。でも確実に私というこの体のスペックも上がってる筈なんだ。
「むむむ……やっぱり全然減ってないじゃん」
私が間引いてる分をこの世界は粛々と補充知るようだ。そのエネルギーは一体どこから来てるのか……世界のエネルギーだって決して無限ではないと思うけど……そこら辺の仕組みはまだ私は理解できてないから理解しようがないけどね。この世界はあたかも砂時計みたいな世界だ。
範囲とそして天井が決まってる。そこに砂がたどり着いたら終わり……消滅するのか、ひっくり返るのかはわかんない。でもたどり着いたらこの世界に人々の居場所はないだろう。まあそのときには人は滅んでるのがこの世界の前提だと思うけど。それをなすのが砂獣なら……そっか……
「砂獣は砂だからなのか……」
無限に湧いてくる蟻のような砂獣を見てそう思った。今まで砂獣は人々を滅ぼすための装置みたいな、世界を進めるための意思みたいな物だと思ってたけど、それは違うみたいだ。こいつらも多分砂と同じ……いくらでも積み上げることが出来るようなそんな存在なんだ。だから無限に湧いてくる。結局私たちに出来るのはこの砂のつもりを少しでも遅くすることだけで……根本的な解決をすることなんて出来ない。
「けどそこら辺は私が考えることじゃないよね」
『なんのの話ですか?』
「この世界の話だよ」
そんなことを言いつつ、私は周囲の状況を装置を使ってつぶさに観察する。せめて何か砂獣の発生条件でもしれれば……いやどこかに砂獣を生み出してるナニか――があるならば、それを探したいなって思ってね。そうこうしてるうちに私たちの視界にもアズバインバカラの町並みが見えてきた。