白い雷が大地へと落ちた。光りが落ちた一瞬後に、ズガガガと耳をつんざくような音が駆け抜けた。それによって砂獣達に大きな被害が出たが……でもこっちの軍の人達や賞金稼ぎの人達も吹っ飛んでる。勿論彼らには攻撃が直接当たったわけじゃ無い。でもこの世界、極端に遠距離攻撃がない。
無いっていうか、協会が魔法を独占してるせいだ。だから下々の者達は近づいて切りつけるしかないんだ。そのせいで今の攻撃の影響を受けた。何せ強力な攻撃だった。見える範囲の砂獣がかなり黒焦げになって動かなくなった。そんな攻撃だったから、衝撃と余波はかなりの物だろう。
「何だ今の?」
びっくりだ。確かに俺も勇者的な魔法で白い雷を出す魔法はある。俺は勇者だから、白くて光って神々しい感じの奴が多いんだ。でも……流石にここまで広範囲の魔法はなかった。どっちかというと、一点突破型が勇者の技は多いんだよな。魔王という脅威を何が何でも倒すためなのかもしれない。
でも今俺はもっと広い戦場に出てる。敵だって変わる。なら……それに対応して俺自身も進化していかないと行かない。今の二つの陣が混ざったような魔方陣……あれは目指すべき物なのかもしれない。
「ノア、何をやった?」
『わかんねーよ。なんか……勝手になった』
なんだそれ? 普通はそういう。けど、実際ノアの奴も分かってないんだと思う。本当にやってみたら、ああなった……なんだろう。
「……回復魔法を使えるか?」
『旦那の記憶を使えば……』
「やってみてくれ」
俺の中にある陣をそのまま真似るのなら、何も起きるはずはない。起きるはずはない……が、それは起きた。足下に広がる陣はさっきよりも全然小さい。俺一人分だ。けど、俺を回復させても仕方ない。何せ俺は一切ダメージを負ってない。だからこの回復魔法は軍や賞金稼ぎに行き渡らせたい。俺は発生源であるだけだ。
足下に発生した陣は最初は普通だと思った。俺がよく使ってる奴だ。使ってるって言うか、魔法とか使うときに何か勝手に出てくるわけだけど……それが出てた。でもすぐにその上にやっぱり知らない陣が重なった。そしてそのまま発動する。俺を中心に光りの輪が広がった。それを浴びた人達から疲労が消え、そして軽い傷程度ならすぐに回復する。
これは広範囲を一気に回復するために、回復量はそこまででもない。それは変わってないようだけど、光の輪が通り過ぎた後もなんか僅かに光りがまとわりついてるように見える。
さっきの雷も威力が上がってた。と言うことはこの回復魔法もそうなんだろう。どうやらこっちは継続回復能力が付与されてるみたいだ。