「そうですか……魔法の痕跡が……向こうにも勇者様を出し抜けるほどの魔法の使い手がいると……そういう事ですね」
一応調査したことを王様やラパンさんへと報告する。自分を出し抜けるほどの魔法の使い手なんて、この先障害になるしかないからな。自分だけが持ってて良い情報ではない。実際まだあの蜘蛛人間ヌポポが自力で脱出してくれてた方が面倒は少なかったと思う。
何せそれならまだあいつに注意するだけで良かった。でもそうは問屋が卸さないらしい。やはりそれなりに沢山の年月を重ねてるだけあって、思ってるよりも教会の層は厚いのかもしれない。
「そうですね。でも自分も自分の世界ではそこまで魔法が達者な方ではなかったですからね。魔法の専門……でもないですし。教会の方は魔法を専門に研究してるみたいですし、一部分ではいくら力の総量に差があっても、秀でてるところはあるのかもしれません」
正面から戦ったら負ける気はしない。けど……戦闘とはそういう戦いだけではない。と言うか、教会は本来ならそういう回りくどいことの方が得意なような気はする。今までは『魔法』という武器を教会しか持ってなかった。
けど自分達がこの世界に来たことでそれは崩れた。自分達が魔法を教えられれば良いんだが……そもそも力の質が違うし、魔法の理も違うみたいだからな。自分達の魔法は使えるが、それはこの世界の力を使って発動してるわけじゃない。自分達の体の中の力を糧に発動してるんだ。
それなら此方の皆さんもそれを掴む感覚を知ってもらって……とも想うがそれだけでもどうにもならない。
(いや、今ならペニーニャイアンがいるか)
あいつに魔法の使い方を教えて貰えば……もしかしたら魔法を使える奴が出てきたりするかもしれないぞ。そうなると、かなり戦力の補強になるんじゃないだろうか? もちろん、教会と同レベルに行き成りなる……何てことは期待してないが。魔法を知ってれば、それだけ対策くらいは出来るだろうし。
「勇者様でも魔法ではまだまだだったと言うことですか? 凄い世界ですね」
「はは、この世界の魔法をまだまだ把握してないからどっちが進んでるのか……とか分からないですけどね」
自分のいた世界では誰もが……って事ではなかったが、それなりに魔法は一般的に普及してた。それによって便利な生活が出来てたわけだが……この世界ではそういう生活が便利になるような魔法はあるのだろうか? 教会は使ってそうだが……
「今回のヌポポの脱出は自分的にはうぬぼれてるわけではないですが、そこらの奴がやったとは思えません。王様は伝道師にあったことがあるんですか?」
「やはり、今回の脱出は伝道師に寄る介入だと勇者様は考えてるのですね」
自分はそこで頷いた。てか、伝道師でなかったら悔しい……いや、困る。確かに秀でてる部分はあるだろうし、自分もまだまだ未熟だ。けど、今までの力の差を考えても他の奴がやった……とはなかなか考えにくいんだよね。
だから真っ先に候補として上がるのは伝道師ではないだろうか? そう考えてる。