『残念です。折角出会ったユグドラシルの欠片が、こんなことになるだなんて……願わくば、貴方の本体までもが狂ってない事を祈りましょう』
そんな事を言ってくるこの施設のAI。そして更に地面……いや、床や壁、そして天井からもウネウネとコードが伸びてきた。そしてそれらが我を殺すために攻撃を放ってくる。我の体さえ楽々に貫くあの攻撃だ。
どうやら消し炭にする……と言うような事はしてくる気がないらしい。それは我の体に残ってるデータが必要だからだろう。流石のシザーラス人の作った物でも、そのデータがある物がないと取り出したりする事は出来ないようだ。いや、当たり前だがな。もしも記憶やデータといったものを、何もないところから取りださせるとしたら、それはもうねつ造だろう。
我と何の関係ない記憶やデータだったとしても、わからんわけだしな。
「あいにくと、我はやられるつもりはないぞ。それにバグと言うがな、そもそもが我は我だった存在だ。やむを得ずに貴様らの技術に身を置いていたに過ぎない。だからまあ、これは必然のようなものだ。狂ってる訳じゃない」
『同じですよ。貴方は確かにユグドラシルの末端くらいにはいます。それなのに、なにも考えずにこんなことをやってる時点でおかしい。狂ってるんですよ』
我を狙い澄ましてくる攻撃を間一髪で避けながら、我は再びパーツを浮かばせてる球体に攻撃を加える。あいも変わらずにビクともしない。
「ちっ!」
『無駄ですよ。貴方では絶対にこの『ウルリル』を破る事は叶いません。なにせシザーラス人が作り出した絶対の隔絶範囲ですから』
何やら自信満々にAIの奴がそういった。なんだかんだ言ってて、そのシザーラス人に生み出された自分を……そして生みの親であるシザーラス人をこいつは尊敬してるんだろう。こいつが何を言ってるのか、我の遅れた頭と知識ではあまりわかる事はない。これだけの強度を保ってるから、その自信満々の言葉の最後には『全体防御』とかいう言葉が来ると思ったんだが、隔絶範囲とは一体何だ?
(まあだが、理解できないから壊せない……なんて事はない!)
そんな思いのもと、我は再び攻撃を加える。そしてそれが何かを理解する為に、攻撃に乗せて、我の力をそこに置いておく事にした。どうせただ殴っても破れはしないのだ。そしてそれだけだと、折角高めた力も、インパクトと共に、失われてしまう。
それはもったいない。どうせまだ破れないのなら、違う方法をとるまでだ。我はただ突っ込んで力で解決……なんて思われてるが、勝つためにこうやって色々と考えてるんだ。そしてこうやって肌がひりつくような戦い……久しいこの感覚がやはり楽しいではないか!!