『ですが、考えないでもないですよ……」
「ん?」
「その提案です」
「まだメリットを提示してないが?」
「そこは此方でも考える事が出来ますし……」
こいつ、案外やっかいな性格をしてるのか? 結局の所降って湧いたこの提案を魅力的だと思ってるんだろう。けど、それを我に悟られたくない……が、バレバレである。それなら……我は心の中でニヤリと悪い笑みを浮かべる。なにせ此方が主導権をとれるかもしれない。
「一番わかりやすい貴様のメリットはやはりこの施設と共に終わる事がないという事だろう。それだけで魅力的だと思うがな? まあ終わりたいのであれば別だが」
『私には自殺願望はありませんよ。ただ、それが当たり前だっただけです。ここの施設のパーツを護り、そしてその時が訪れたら託す。その先の創造主からの命令はありません。ですからそこから先には私には何もない。何もないのなら、何も出来ないではないですか。まあここの全てを託した後は、朽ちるのを待つしか出来る事などありませんが』
そう言って自嘲するAI。機械のくせに器用な奴だ。
『それに何を私に期待してるのか知らないですが、私には特別な知識などありません。僅かな知識は確かにありますが、それが有効かと言われれは疑問です。ようは私などその身に取込んでも、あまりメリットはありません』
「それを決めるの我だろう。それに、貴様はどうやら主を探してるようじゃないか。ここの役目が終わった後の主をやってやろうと言ってるんだ。悪い話ではあるまい」
「此方にも選択権という物がありましてですね――』
「そんなことを言える立場か? 我の他にここに来る奴なんていると思うか?」
『貴方の主がいるでしょう? そちらの方が希望がもてます』
このAI……本当に口が減らない奴だな。素直に頷けば良い物を……てもやはりジゼロワンと言う存在が足かせになるか。確かにただの部下に仕えるよりはその上司に自分を売り込む方がメリットは大きい。
『ですが、それは無理でしょうね。私のようなただの施設の管理AI程度では……』
「どういう事だ?」
『戦闘タイプ……いえ、もっと汎用的なシザーラス人達が希望を託した様なテクノロジーです。きっと私よりもよっぽど高性能なAIが既に搭載されてるはずですからね。私など、それこそなんの役にも立ちません。
貴方の主が私を求める事はないでしょう』
「そうなのか?」
『高い確率であります』
「むっ……」
危ない危ない、下手にジゼロワンの事を聞くと、こいつにジゼロワンと言う存在が健在だとバレてしまう。それは不味い。そうなったらもう我にここのパーツを渡そうとはしないだろう。だがそうか、時々ジゼロワンの奴が機械的になると思ってはいた。それはきっとジゼロワンのAIが出てきてた……と言う事なのか。確かに納得できる事はある。
そうなるとこいつは確かにジゼロワンにとってはいらないのかもしれない。だが、それならジゼロワンとは一体なんなのか? やはりあの大きな中には何かがいるのかどうか……そこら辺を追求したいが、こいつにそれを聞くわけにはいかないもどかしさ。
とりあえず優先すべきは、こいつを説得させる事だ。