体が動かない。ダメージが思ったよりも大きかった? いやそんな生やさしい事じゃない。これはもっと深刻だ。
『動けないでしょう。自分の体をわかってないからそうなるのです。言ってましたね。貴方は元は違う存在だと。珍しい事案です。ですが確かにシザーラス人が作る体は死と制限を乗り越えてますから、他の命が求める至上の体と言っても差し支えないでしょう。
けど、どうやら貴方はそれも理解してなかったようですね。色々なものを受け入れる事が出来る器であるそれに、シザーラス人がセーフティを施してないとでも?」
セーフティか……なんか多分、この器を手に入れた奴が悪さをしたときの為にシザーラス人がどうにか出来る様にしてる機構……とかそんなところだろう。確かにこの体はとても高性能だ。この体に移っただけで、今までの体がどれだけ窮屈だったか……それがわかるほどにこの体なら、何だって出来る……とも思えた。
(だがどの道、上から押さえつけられるんだよな)
ジゼロワンに押さえつけられ、そして知らなかったがシザーラス人によっても、我はどうやら楔を打ち込まれてたらしい。それをこのAIは利用した……いやしてるのか……これは不味い……少しでも時間を稼いで対策を考えないと、次の瞬間に我という存在がけされるかもしれない。
『とりあえず機能を停止しましょう。そして貴方のデータを抜き出します。貴方にその体を与えた存在とコンタクトをとり、私は役目を完遂する』
コードが伸びてくる……だが避ける事も出来ない。不味い……なんとか口は動く。だからそれを使うしかない。
「我のような存在が珍しいと言ったな。そうなのか?」
『私は長い時間ここにいますが、みた事はないですね。データにも普通は仮の人格を据えたりするのが普通だとあります。それか私の様なAIですね。さて、もう良いでしょう。こんな事は時間稼ぎにもなりません』
バレてるな。コードが我に絡みついてくる。だがなにも出来ん。これは……もう……使うしかないか。神から得てた力。それを意識すれば、体の内の別の部分と言うか……表現しにくいところにそれがあるのがわかる。だがあるし、それにこいつは多分気づいてない。この力を使うとどうなるかわからないが……ただの純粋な力だ。無理矢理体を動かす事くらいは出来るんじゃないだろうか?
このままなにもせずに負けるよりはよっぽどそっちが良いだろう。
「我に宿れ、神の力」
そう言って我は笑ってやった。