「我に宿れ、神の力」
その言葉の後に力は純粋に応えてくる。我の体内の中でそれが爆発するように湧き上がってくる。
「うぐああああああああああああ!!」
動かなかった体が動く。いや、本当は動かないんだろう。だが我は……いやこの神の力は我のこの体に収まりきらずにあふれ出てる程の総量がある。だからこそ、我の体が暴走してる。そうこれは我の意思ではない。
思惑ではあった。だが、この動きが我の意思が入ってるかと言えば、そうではないようだ。
神の力をまとった我は、絡みついていたこの施設の管を振りほどく。そして再び球体へと攻撃を仕掛ける。
『まさか……その力は……』
この施設のAIも我のこの隠し球に驚いてるようだ。それはそうだろう。何せ我もそれなりに驚いている。――って今は我の意思が全く働くなくなってる。この体に我の命令がが一切伝わらない。
「があああああああああああああああああ!」
そんな獣のような叫びを上げて、我はひたすらに球体を攻撃してる。いや、これは我ではない。我の体を乗っ取った神の力だ。既に意思というか野生というか……そんな感じだが……我の体を易々と貫くあの攻撃を施設の防衛設備達はやってきてるが、それさえも気にしてなんかない。というか、通用してない。避ける事すら困難だったその攻撃……そして我の体を紙のように貫いていたそれらは我の体から漏れ出てる神の力によって完全に阻まれてた。
「あがあががあああああああああああああああ」
我の体だが、我ではないような叫びを上げる。どうやらさらに出力を上げるらしい。球体は神の力をもってしてもなかなか壊れるものではなかったからだ。何やら体からギシギシ、ガシャガシャ、メキメキとかいうヤバそうな音が聞えて来る。
この後、どうなってるのか怖いところでもあるが、だがそれ以上に面白く我は自分自身を眺めていた。この力を持って理性的に、そして完璧に使いこなせる事が出来るのなら……我はさらなる高みへと確実に上がる事が出来るだろう。
流石は神がジゼロワンから離れるためにくれた力だけはある。力を高めて行くと、次第に我の姿が消えていく。元々、この体は我の前の体を写してるだけだ。その幻影が晴れて、人形のような見た目が現れる。顔がないただの人形の見た目。つるっとした男女もない体だ。だがそこに明確な違いが出てきた。それは色だ。
元の色は銀色だった。だがそれが神の力の高ぶりと共に、黄金の色に変わって行ってる。そしてそれをみてAIがこう言った。
『まさか、ユグドラシルの中枢でもない端末が自身で己をアップグレードさせますか。驚くべき事です』
どうやらそれは驚くべき事のようだ。力さえあれば、我はこの体もどんどんと強くする事が出来る……それがわかった。