「貴様我と共に来ないか?」
『それは一体何の冗談ですか?』
我のその提案にAIの奴は淡々と感情のこもってないような声を出す。既にこいつは案外感情という物が豊かだ――それを知ってるからこそ、その無機質な声に期待を寄せてるのがわかる。そんな事、こいつは考えた事もなかっただろう。
だからこそ、期待なんてした事もなかった。だが、今一瞬でこいつは多分、その可能性って奴を何百通りと考えたんではないだろうか? こいつの頭脳……いや性能か? それならそのくらい可能だと思う。そして見たはずだ。希望って奴を。
それを見てしまったら最後、どんな生き物……生物……
(こいつはどっちでもないな……)
――不味いな、生物ならそれを手放す事は出来ないと思えるが……AIはどうなんだろうか? よくわからない。だが……それでも奴は検討をしてるだろう。こいつがただの機械なら同じことをやる事に苦痛なんて感じないだろう。けどどうだ? こいつは言ったはずだ。
『夢も希望もないような時間』
それはつまりはここでの生活……そしてパーツを送った後の終わりに向かう時間を悔しく思ってるのでは? パーツはきっと託したいんだろう。正しい奴に。だが、それでこいつの役目は終わって、この施設と共に朽ちる運命にある。
本当なら、そこに疑問なんて持たなかったはずだ。機械なら、そう言うものだろう。機械とは融通が利かないものという印象だ。まあシザーラス人の機械は我の知ってるものよりも滅茶苦茶高性能だと思うが……でもだからこそ、こいつはその役目に嫌気……とまではいかないがその先を見る事が出来るように成ってる。
「冗談じゃない。貴様はなかなかに有能そうだからな、我にはこの世界だけではない。世界の周りの知識がない。我は色々な世界に行きたいからな。その時に貴様が有能そうだと思っただけだ」
『使えそうだからですか……』
「イヤだったか?」
『いいえ、利害関係こそ、生物の一番わかり易く、そして納得しやすい契約理由です』
「それなら――」
『ですが、私へのメリットはなんですか? 貴方はユグドラシルシステムの一部を持ってますが、世界を渡る術はないでしょう。どうやってこの世界に来たのかはわかりませんが、次の世界に渡れないのなら、あまり状況的に変わりはありません。
知っているでしょう? この世界は時限爆弾のような世界です』
メリットか……確かに利害関係なら双方にメリットが必要だ。こいつにとってはこの施設からの開放……それが何よりのメリット……だと思ったが……
『私にも誇りがあります。偉大なるシザーラス人により作られその役目を与えられたAIという誇り。安い奴だとは思わないでください』
「そうか、それは悪かったな」
だがそんな気政田からこそ、俄然気に入ったぞ!!