『どうしたのですか？ 早くデータをください。もしかしたら私は役目を終える事が出来るかもしれないのです』
なかなか我が端末をとらないから、AIの奴は滅茶苦茶それを要求してくる。流石にちょっと不信感って奴を抱かれてそうだが……いかんせんこのまま我の中のデータを渡したら、ジゼロワンの事が公になってしまう。それは困る。
AIが説明した事の八割は実際の所よくわかってない。我ではここのパーツやらなんやらを有効に活用できる事はないのかもしれない。AIの事を、そしてここのシザーラス人の事を思えば、ジゼロワンに素直に託して、我はとりあえずさっさとここから離れる……くらいが丁度良いのかしもしれない。
（だが、それでは我には何の得もない。何も得ぬ魔王などおらぬ。我は基本強欲だ。それに、説明を聞いてたらここにある物は手放すのが惜しい。使えなけれはゴミだが、我にもそのユグドラシルの片鱗くらいはあるはずだ。なにせ我もジゼロワンのパーツの一部である事に変わりはない。なら、パーツ同士で繋がる術はあるかもしれない）
その思いがある。一番無難なのはさっさとここのAIにジゼロワンの事を教えて我自体はとんずらする事だ。神が言ったようにここにある物を使えなくても、我には神から貰った純粋な力がある。
（いや、この力を使えば無理矢理にでも我に組み込んだり出来るかもしれない……）
強引な組み込みは何かひずみを生み出すかもしれないが、我のこの体……我は全然知らないからな。というかわかってない。強くなったのは確かで、それでよいか……とか単純に思ってはなかった。色々とどれだけの力が出せるのか……試しては居たが、かなりこの体が高性能だという事くらいしかわからない。
それにこの体はジゼロワンから提供されるエネルギーがないと活動し続ける事は出来ない。それはある意味、上下関係を感じさせる気に食わない物だ。
（勇者はそれを克服した……それはつまりは、ジゼロワンの支配から一歩……いや片足を抜け出せた状態だろう。正直羨ましい）
我はまだその支配に全身浸かってる。だが、ここのパーツで一つ……とても興味深い物がある。それは『変換高効率コンテナ』だ。AIの説明によると、エネルギーの変換効率を高めて、そしてその変換したエネルギーを圧縮してより多く貯めておく事が出来るように成ったパーツという事だ。なんとも素晴らしいではないか。あれを我に組み込む事が出来れば、我もジゼロワンに頼らずに活動できるようになる。
しかも……だ。聞いた話によると、確かに勇者は自身で力を生み出せるようになったようだが、そのエネルギーだけで動き続ける事が出来るほどに高効率ではないらしい。だが……あれは所謂バージョンアップアイテムだ。そしてユグドラシルなんやらに最適化されてるだろう。なら……あれを我が取り込めれば、それこそどんな世界でも活動できるほどのエネルギーを自分自身で産み出せるようになる――可能性は高い。
永遠に戦い続けたい我にとっては、夢のようなアイテムではないか。永遠に戦い続けて、そして様々な世界で強敵を求める――それにはあれが必要だ。
