爆発1秒前。こいつが死ぬことは別になんとも無い。自業自得。そしてあの子に悪影響が出る前に退場してくれるならそれは私的にはとても良い事だと思う。魔王の事は見限ってる。折角自分達では何百、何千年とかかってもたどり着けないような領域にたどり着いたというのに、自分の力を過信したせいで貴方は終わる。
いくら魔王と呼ばれてその力に自信があったとしても、それ以上に我々は進んでいる。それがわからないはずも無いでしょうに。それとも得たアイテムになにか暴走してもどうにかなる術でもあったのか。けど、既にもう駄目っぽいですね。
まあですが、このまま爆発されたら私もただでは済まない。だからこそ、ある程度押さえる必要がある。私は力場に侵入するために魔王の力に自身の力を寄せている。それはただ力場に入り込むためではない。
この暴走を抑えるのが第一の目的だ。だからわたしは寄せてる力を溢れ出して、魔王に流し込む。それによって私が制御権を魔王から奪うつもりだ。すでに魔王の意思は暴走が進んだことですでに表面には現れていない。
さっきまでは意識を保ってたが、でも暴走とは本来こういうもの。そして魔王はそのリスクを甘く見てたとしか思えない。魔王の体の中で魔王の力が集まりすぎてそれは限界をむかえてる。そしてそれが臨界に達したとき、その存在とともに周囲を巻き込んで爆発する。それが暴走の果てであり、結果。
だから私はそれを回避……したくはないんだが、私はこの体を失いたくない。その心があると自覚してしまった。そうなるとこの暴走をどうにかするしかない。けど、今の魔王は私の内部のエネルギーを凌駕するほどのエネルギーをもってる。それは得たパーツのせいでもあるし、暴走のせいてもある。
そもそもが暴走なんてことは早々起きないようになってるし、出来るものでもない。なぜなら、暴走なんてのは普通は自身が制御できる以上の力がないと起きないからだ。そして普通は自身の肉体には自身が制御できる以上の力なんてない。肉体に内包できるエネルギーというのは限界値があるからだ。
もちろん私達の体はハイスペックだからそれはとても大きい。それにいくつかの改良、そして得たパーツによって魔王の体は想定よりも大きい力を内包できたんだろう。普通ならその都度その要領に対してリミッターをつけておくべきだ。
けど、それは魔王だけでは出来ない。メンテナンスやオーバーホールは私達の領域だ。だから強大な力に対応するだけの体はあってもシステムは出来てないという状態が起ってる。私はとりあえず力を同期させて流し込み、魔王のシステムに入り込む。そして其処で集まってる力の臨界を押さえる方向に動く。
なにも誰も指示できない状態だから力は一カ所に集まり、それに耐えられなくなって爆発が起るんだから、力を他に流してやれば良い。それは単純な理屈だがそう簡単な事でもない。なにせその流れが既に出来てるからだ。
大きな川の流れが出来てしまったら、その流れに呑まれていくのは必然と言うこと。けど分岐を沢山作れば、まったく流れていかない訳でもない。とりあえず一瞬で百近くの枝分かれした道を作って一秒後の臨界点到達を三秒後には出来た。けどまだ三秒。百の枝分かれで三秒とはね。この暴走を完全に止めるには一体どれだけ道を作れば良いのか……単純計算しても……いや、それは不可能だ。
だからこそ、三秒で更に別のことをやる。そもそも私はこの暴走自体を止めてやるつもりは無い。私が最後に立ってる。それが出来たら良い。ある程度の負傷くらいはあの子も許してくれるでしょう。それにそっちの方が……
(頑張った感が出て、褒めてくれるかもしれませんしね)
そんな事を考えてた。