ふむ……なんか興味深いことを盗聴した。私は今、サーザインシャインインラへとドローンを向けて情報収集してるわけだけど、どうやらサーザインシャインインラは協会が施した強力な結界で守られていたようだ。
なんとも優遇されてることで……アズバインバカラとかジャルバジャルにはそんなのない。まあそういうことをすることによって、サーザインシャインインラの価値を認めて、そして水源であるサーザインシャインインラを守るという態度を見せることによって、協会がちゃんと平民とかにも寄り添ってる――とか示してたのかもしれない。
まあ今は教会自体のことではない。問題はこの街にはその結界があってそれがこの街の人達の心の支えになってた……と言うことだ。けど――
「もうそれはないんだよね」
結界はそもそもが目に見えないものだ。だからどうやらこの街の普通の人たち……避難してる人たちはまだ結界があると思ってる。けどどうやらそれはもうないみたい。てか普通に私のドローンが入れたから、結界なんてそもそもが気づかなかったよ。
私も上層部の奴らが結界の事を話題に上げてなかったら分かんなかったもん。「え? そうなの?」って感じ。話を盗聴する限りどうやら結界は砂獣がやってくるタイミングの少し前に消えたらしい。
それってあまりにもベストタイミングすぎると思わない? この砂獣の波にも作為的な何かを感じるのに、更にこの街の人達が信頼してた結界がちょうどこのタイミングでその役割を果たしたかのように消えた。
まだ憶測だけど、この波を協会が起こしてるのだとすれば、逆に自分たちがサーザインシャインインラへと施した結界が邪魔になったから予め停止させた……ということじゃない? 結界さえあれば……という上層部陣の嘆きがよく聞こえてくる。
それからどうにか直せないのか? とかね。でもやっぱり結界の維持とか運用、そんなノウハウはすべて協会が管理してたらしく、無理らしい。なら……とこの街の協会の人にもちろん話が行ったわけだけど、どうやら地方の神父くらいにはそのノウハウを教えておくような協会ではない。
というわけで治すことはほぼ不可能。
「あの子供はどうするのだ?」
「最悪、生贄にするのはどうだろうか?」
「罪状を発表すれば、誰も反対などしないだろう」
「確かに古の文献には生贄で波を抑えた話があったな」
「あれは創作物ではなかったか?」
「そうだとしても、我らにはどんな手を使っても時間を稼ぐ必要がある」
「砂獣に子供一人分の体などおやつにも成りはしなさそうだがな」
そんな物騒な話をサーザインシャインインラの上層部はしてた。どうやら結界をどうにかした犯人は捕まえてて、それは子供らしい。中央の協会のやつが侵入してやったのか? とか思ったけどどうやら違うらしい。じゃあ教会は無関係でたまたま? いや、とりあえずその捕まってるらしい子供でも確認してみようかなと思う。
そもそもが子供がたまたま破壊できるような代物なのかって疑問だしね。