カツカツカツ――という音が聞こえてきた。子供を助けて、この地下牢からの脱出を図ろうとしてたわけだけど……ここは地下牢の中でも一番奥深くだった。つまりは逃げ場がない。このままではこの足音の主とかち合うことは必然である。
まずいな……ここを知ってるってだけで、どう考えても敵……というかこの子供にこんな拷問をした奴ら、つまりはサーザインシャインインラの上層部の奴かそれの息のかかったやつってことだよ。
つまりは見つかってもいいことはない。一応ドローンは電気ショックくらいは流せる。それは治療にも使えるし、出力を上げればスタンガン的な効果だって期待できる代物だ。ドローンは光学迷彩で姿を消せるから、こうなったら先手必勝だね。足音的には一人だ。一人を気絶させるのはそう難しいことではない。
(一応外も確認しておこう)
本当にこの足音の主一人なのか……それは大事だろう。この地下牢への道が一つなら配置してるドローンたちの映像を見ればわかるはずである。てかそもそもが誰か来るかもしれないことは想定してるから、誰かが来たらこの地下の方へと続く階段のところに監視目的のドローンをおいてたんだけどね。
それが反応してないってことはだよ? つまりは私が見つけた入り口の他にもこの地下牢に続く道はあったと……そういうことではないだろうか? とりあえず私は色々と映像を確認して、その誰かを捉えられるドローンくんを探した。
「いたいた」
そして見つけた。こっちに向かってきてるのは、顔色が悪い人だった。中年男性くらいで、目のクマがひどい感じの人だ。観た感じいい服を着てるように見えるから、そこそこの地位にある人だろう。
でもこんな場所に本当に偉いやつってこないよね? ってことはやっぱりそこそこで、偉いけトップに入りきれなくて、けど下でもない……言うなれば中間管理職的な?
「どうして……イシュリ……」
なんかそんな言葉が聞こえた。聞こえたというか、ドローンが拾ったわけだけど……そこで私は考えた。もしかしてだけど……
「イシュリってこの子の名前とか? だとしたらもしかして父親?」
有り得そうではある。ということはもしかしたらたったひとりでこの地下牢に来たのって、もしかして上層部の隙きを突いてこの子を……イシュリくんを助けるためなのかもしれない。
「どうしようか?」
もしも本当にこの人が彼の親だというのなら、引き渡した方がいいよね? でも、きっとそれではこの子は助からない。いや、私が持っていったとしても、助かるかは分かんないが少なくとも、彼に引き渡すよりは生存の確率は高いはずだ。
それにこの人を利用すれば、色々とサーザインシャインインラの上層部の闇を知り得られそうな……そんな気もする。うーん、どうしようかな。まあとりあえずいきなり気絶させるのはなしにしておこう。