しばらくイシュリ君は安静にしておくことになった。一応脳は戻ってるが、彼が目覚めてみるまでは本当に治ってるかなんてのは分かんない。でもだからってずっとけが人を見守っておく……って程に今はのんびりとしてる場合でもないんだよね。
なにせこのサーザインシャインインラは砂獣によって取り囲まれてるいる。いつその砂獣達が襲ってきたとしてもおかしくない。それをどうにかしないと、安心なんて出来ないだろう。
『さて、どうでした外の方は?』
私はそんな風に勇者に聴く。あらされたお屋敷の中、もうこの際どこも同じだってことで、一応自分たちが使うところだけを大雑把に片付けた。まあひっくり返されてたソファーとかテーブルをもとに戻しただけだけどね。
一応そこに座って……私はドローンだから座ったりしないし、おばあさんも座りはしないし彼女だけはイシュリ君を見守るために、看病するために向こうの部屋へと残った。そして向かい合う勇者とおじさん。
その間に私――ドローンが居るという構図だ。
「そうですね。かなりの数の砂獣が囲んでいますね。この危機をこの街は乗り越えられるんですか?」
「それは……アズバインバカラはどうなっているんでしょうか?」
実際、この街の戦力でこの危機を乗り越えることは不可能……とこの街の上層部たちは考えてる。だからこそ必死に教会との連絡を取りたいと頑張ってるようだ。けど、その芽はない。なにせさっきから全然連絡取れてないし、そもそもがこの波が教会の仕業なのが高いからだ。イシュリ君を使って、教会はきっとこの街の結界を破壊させた。
なにせこの世界で砂獣を他に使役できる技術を持ってる奴等っていないはずだ。だから真っ先に教会が出てくるよね。
「アズバインバカラは既に軍を編成して出発しています」
「なんと!! そこまで迅速に……ありがたいです」
そう言っておじさんは頭を下げる。まさかもう軍がこのサーザインシャインインラへと向かってるとは思ってなかったんだろう。他の街がこのサーザインシャインインラに救援に来るには最低でも五日くらいはかかるか……ちゃんとした戦力を編成してとなるとそれこそ一週間とかそういう規模になると覚悟してたはずだ。
なにせたくさんの軍を動かすというのはそれだけ大変なことなのだ。食料とかさ、この世界では常に物資不足だし、それを他者のために使うなんて……なかなかできないよね。まあけどそれが出来る地盤が既にアズバインバカラにはある。それは私が作った施設だ。あれは大量の物資を作り出してくれる。
美味しくはないが、栄養素満点の固形食料とかも作れる。あれがあれば遠征時の食料としては十分だからね。まあ勿論、それが砂獣から作られたことに抵抗なければ……だけどね。まあ奴等の血肉を使ってるというか、エネルギーを変換してるから抵抗感としては少ないかもしれないが……そこまでこの世界の人達は知ってるわけじゃないからね。
それにこのサーザインシャインインラの人にそういうことは言う必要はない。ただアズバインバカラはもう動いてます――ってことだけが伝わればいいのだ。
「でも外の状況的に、厳しいのは確かですね。奴等がいつ動くか……正直、ここの戦力でどれだけ持ちこたえられますか?」
「それは……いいところで一日だろう」
そう渋い顔で言うおじさん。実際、一週間くらい持ちこたえてみせよう!! とか言っても信じられないからね。きっと正直に話してくれてると思う。なにせ別に壁があるわけでもないし、兵力だって多分だけどここはアズバインバカラよりも少ないんじゃないかな?
「恥ずかしいところ、この街に戦力的な軍は多くはない。なにせ、教会を当てにしていたから……」
それを後悔してるんだろう。でも、このおじさんが悔やんでもどうしようもない。そこまでの地位でもないだろうしね。腐ってる上の奴等が悪いのだ。やっぱりだけど、砂獣が動いたら一日……いやはっきり言えば数時間でこのサーザインシャインインラは砂の下に沈むだろう。だからこそ、私は二人にこう告げる。
『なら、できる限り砂獣の進行を送らせないといけませんね』