「教会はなぜ、私達を助けないのだ……私たちはあんなにも教会に貢献したというのに……」
物言わぬ息子を抱きかかえて、涙ながらにそう大の大人が言うと、なかなかに来るものがある。なんというか……哀れ……は違うか。悲しいね。でもどうしてそんなにあの……あの教会を信じられるのか私には分かんない。
いや、この世界の支えは大部分を教会が担ってる。だからこそ、教会が絶対的な信仰対象にあるのはわかる。こんな過酷な世界だからこそ、人々は心の支えになる存在を求めてて、そこにうまく教会が入ってるから絶対的な信仰対象になってるんだと思う。
でも教会の奴らはそれをいいことに自分たちのやりたいようになってる。私から観たらめちゃくちゃやってるんだけど、ここまで信仰されちゃってると、なにやっても信者たちが勝手にそのめちゃくちゃに理由をつけてくれるんだろうね。
『教会が本当に義理を果たしてくれると、そう思ってましたか?』
「…………わかってたさ。アイツラは私達を利用してるだけだということくらい……だが……それでも地上で生きる我らには、教会の力が……技術が必要だった……」
そう行って歯を食いしばるおじさん。実際、上の方にいる人達はもちろんだけど、教会の闇の部分もちゃんと知ってるんだ。教会がきれいな存在……なんて思ってるのは庶民だけ。でも上にいる人達は自分たちも特権階級にいると勘違いしてる。
教会の奴らにとっては、中央とそれ以外では全然違う。教会の中央の偉い奴らにとっては、周囲の街なんてのは最初から奴らの目的を果たすための餌でしかない。
『教会はこのサーザインシャインインラを見限ったのは確実です。今から教会にすがっても無駄ですよ』
「その言い方……自分たちには救える手段があるみたいな言い方だな……」
『確実に救える……なんて言えませんが。やりようはあります』
とにかく威厳があるような声を出して、ボロが出ないように頑張るよ。普通に話してると私って威厳とか全然ないらしいからね。こういうひどいことをやられた奴はこっち側にいれるチャンスでしょう。
まあ私達の仲間にする気はないけど、アズバインバカラへはありがたいかもしれない。だって本当の上の方って仕事とかしてないじゃん? いや、ラパンさんはしてるけどさ、様子見てた限り、ここサーザインシャインインラの上層部は教会にベッタリでかなり腐ってた。
となるとだ。上の連中がやってたことってどうせ私腹を肥やすようなことだ。そんな奴らは役に立つとは思えない。けどこの人は多分そこそこ偉くて、でも腐ってる位置にいるわけじゃなさそう。なかなか微妙ではあるけど……かなり疲労とか溜まってるからね。
波が起こってから対処に追われて……ってだけじゃなさそうなんだよね。それ以前からの疲労とかあるように見える。ということはちゃんとこれまで仕事してた人ってことじゃない? まあだからこそ、こんな人の息子がこんなふうになってるのは忍びないってのもある。
そんなことを思ってると、私のドローンに反応があった。やばいね。もたもたとこんなところで話してたから誰か来た。どうにかして見つからないように移動したほうがいいね。勇者もあと少しでつくし、それまでになんとかここから離れたい。