「うーん、これは無理かもね」
私はコクピット内でそんな事をつぶやくよ。今私の周囲には沢山の小窓が体の周りに展開してる。ソレは沢山のドローン達による映像だ。勿論、今一番話題の場所、サーザインシャインインラの様子を映してるわけだ。
つい先程宵が開けて、ついに始まった周囲を囲んでた砂獣達による一斉進行。所謂、『波』と呼ばれるこの世界の厄災みたいなものだ。波が起こると街が消える――そう言われてる。そしてそれはまさに現実になり得ようとしてる。
「全く持ってないじゃん……」
波が起きたから、サーザインシャインインラにある軍が勿論急いで出動した。でもそれもとても迅速だったか……と言われるとそうでもない。そもそもがそんなに数も居ない兵士たちは、数も居なければ練度も低かった。あと意識。
だからだろう一斉に広がっていく兵士たちは、各々の担当の場所に行く前に、逃げ出す奴等続出である。砂獣はサーザインシャインインラをまるっと囲んでる。そうなると、サーザインシャインインラ側はただでさえ足りてない軍を薄く広げるしか無い。だからこそ、部隊を分けて配置して派遣するわけだ。
ソレはまあ良いと思う。そうするしか無いしね。けど問題は絶対にこの段階で前に出る兵士たちの命はないって事がわかりきってることだね。いや、命が無いってことはそういう状況だって軍に居る以上はありえる――と覚悟くらいしてるものだろう。兵士ならね。そう、普通の兵士ならね。けどどうやらサーザインシャインインラの兵士たちは違ったようだ。
この兵士たちは自分たちが死ぬのが嫌になったらしく、命令を聞かずに、逃げ出した奴等がたくさんいた。でも……そんなのはなんの意味もないっていうね。だってなにせ、サーザインシャインインラは全周囲を砂獣によって囲まれてる。逃げ場所なんてのはない。逃げ出した兵士たちはきっと地位の高い、そう比較的裕福で地位の高い息子たちが逃げ出したから彼等はまっさきにサーザインシャインインラの中央の宮殿に逃げ込もうとした。けどそれは橋の手前で阻まれる。そしてそんな事をしてる間に、砂獣達は街に入り込み、結局橋のところで戦うことになって、彼等は何も出来ずに死んでいくって言うね。
ある意味で、橋のところには逃げ出してきた奴等が集まってたから、まだ応戦できてるといえばできてるかもしれないが、でもそれも時間の問題だ。それこそ後五分十分の問題。
一時間二時間とか耐えられそうもない。まだもうちょっと……それこそ街に入り込まれる前に広いところで防衛線でもちゃんと引けてれば……まだ違ったかもしれないが……
「ん? あれは」
なんか橋を渡ろうとした蟻型の砂獣が爆散した。何が? とおもったら、橋の先に砲台みたいなのが見える。ああいうの、この世界では初めて見たかも。橋は一直線だからね、当てるのなんて簡単だろう。次々と橋に迫ってくる砂獣をその砲台から放たれる弾が退けていってる。それをみて、押されまくってる兵士たちはなんとかその砲台の方へといこうともがいてるが……そこで踏ん張ろうと思えないのが、この街の兵士の終わってるところだよね……と思う。