「なんかいくつかこの人に対する動画があるな」
「マジックかどうか、本物のマジシャンとかアマチュアとかが語ってるな」
「でもさ……マジック以外にないだろ? それ以外って何だよ?」
「動画では編集とか言ってるけど……」
「生放送とかなかったっけ?」
そんな事を陽キャ達は言ってる。あまりにもMr.ゴッドのマジックが凄すぎて色んな人がその審議を検証してる動画がある。けど結局どれも、マジックで可能だろう……という結論だった。勿論野乃野足軽それらの動画を全部見たわけじゃない。
でもそれなら真似しようとする動画やら、真似してみた! とかいう動画が上がってておかしくない。けど、実際の所Mr.ゴッドのマジックを再現するような動画ってない。マジックなら……そう言い張るのなら、再現する動画が必要だろう。それにそれを言ってるのはプロとかまでも何だからなおさらだ。
でもそうじゃない。けどその根拠はあったりもする。なにせMr.ゴッドは動画の中だけでしか活動してない。アマチュアの中にも、現実の方でも公演をやってるマジシャンとかは居るらしい。まずは動画サイトで登録者を増やして知名度を上げて、それからリアルな場で自分の力を示していく――ということをマジシャン界隈はやってるらしい。
けどMr.ゴッドは違う。ずっとネットの中だけで活動してる。それも野乃野足軽が怪しいと思う所以だ。そしてプロたちも動画でしか再現できない事をやってるから、リアルで披露することなんてできないんだろうと思ってるんだろう。
「はっ!? ておい」
一人が普通に盛り上がってる事に気づいたんだろう。彼等陽キャ達はこんなマジックで盛り上がるためにこの休み時間に動いたんじゃない……と気づいて野乃野足軽の方をみる。
「お、おう。そうだったな。いやー凄いな。この人。もしかして野乃野くんはマジックできたりするの?」
「いいいや、俺なんかは……」
「憧れてるだけ? まあ実際この人のをいきなり真似するとか無理っぽいよな」
「でもでもこれならって奴を真似しよとしたりしてるんじゃないの?」
動画を観て盛り上がってた陽キャ達は、なるべく野乃野足軽に絡むようにしたらしい。さっきまでただ「凄い」って事を友達と共有してるだけだったが、野乃野足軽に今は積極的に絡んでる。
「他にはなにか無いの? マジック以外でさ」
「他ってそんな……」
いきなり言われても……って感じの野乃野足軽。そんな中チャイムの音がなった。そうなると授業が始まるから、流石に陽キャたちも自分たちの席へと戻る。そんな陽キャたちを「ホッ」としつつ見送る野乃野足軽。なんとか開放された――そんな事を思ったわけだけど、なんか陽キャ達は次の時間の休み時間にも来やがった。