メリアス・アルドパルトさんのおかげで砂獣に立ち向かっていた市民の人たちも一致団結することができた。それぞれが勝手に動いて勝手にやってた戦い。それを少しは組織だってやれるようになってる。
それに……実はさらに戦力は増えていた。メリアスさんが来てくれたのなら! ということでさらに残ってた武器を手に取った人が建物から出てきてくれた。さらに戦力が増強されて、さらにみんながメリアスさんの指示には従う。これはなかなかにいい傾向だね。
何せ人数も多くなったから、休める者も出てきた。今まではみんながみんな、それこそ全力で砂獣の相手をしてた。それは一時的な勢いは確かにすごい。でもこれは波なのだ。波では砂獣は常に生み出されては補充される。実際今も砂から砂獣は生まれてる。
圧倒的な物量……それに今まで幾つもの街が陥落してきたんだ。だからこそ大切なのはどれだけ長く戦ってられるか……ってことになる。もちろん根本的な原因を突き止めてそれを止めることで波を止めるってことができれば理想ではある。実際波が終わるまで踏ん張る……なんてのは無理がありすぎる。現実的じゃない。
でも今まではそんな余裕なんてなく、蹂躙されてたきたんだろう。実際このサーザインシャインインラでの状況はあり得ないことが重なってるからね。そもそもか波に原因がありそうってのがありえないっていうか……これが人為的な波だとするなら、教会の奴らを叩き潰すことでどうにかなりそうってのが一つ。
もしもそうじゃなくても、今この波には親玉的な存在が現れてる。それは黄金の鬼だ。実際今での波ではあんなのはいない。まあそれはそうだね。あれは私のせいでもある。
でもなんか、波の親玉的な位置に君臨してしまってる。実際あれを倒して波が止まる……かはわかんない。ただあいつがそういう見た目してるからあれが親玉な感じになってるだけで、実際結構関係ないんでは? と思ったりもする。でも事実として、あいつが吠えたことによって、サーザインシャインインラを囲ってた砂獣たちが一斉に動き出したのも事実なんだよね。
もしかしたら既に砂獣の指揮権? というか支配権は教会からあの黄金の鬼へと移ってるのかも知れない。そしてそれは教会も予想外のこと……ということなら納得できる。
「それを確かめた方がいいかもね」
アズバイバカラで緊急生産されたドローンがこっちに急いできてるわけだけど、そいつらの一部をこの様子を見守ってる教会の奴らの場所へとやろう。潜伏してた奴らだけど、その自信過剰ぶりのせいで奴らの魔法は甘々だ。隠すって部分に労力を割いてないからだけど、そろそろ私や勇者とかの第三勢力の存在を奴らは意識した方がいいと思う。
まあ今更急いでそこに力を入れたところで、G-01の看破する性能から逃れられるとも思わないけどね。
「まさかそれがわかってるから……て、そんなわけないね」
教会の奴らは自分たちこそが一番だと信じて疑ってなんてない。確かに奴らはこの世界では一番の勢力で一番の魔法の使い手だろう。それは間違いない。なんてったって長年その技術を独占してきたんだ。
でもそれは結局世界を渡ってきた私たちには一つの世界では……ってことでしかない。その慢心が自分たちを追い詰めてるってそろそろ気づいても……きっと奴らは認めることなんてできないだろう。だってそんな殊勝な心を持ち合わせてなんかないからだ。