「そうなんです。私と野々野君、いえ足軽君はお付き合いしてます。認めてくれますか?」
「認めるも認めないも、ボーイフレンドにそんな過程は不要でしょう。結婚するわけでもないのですし。流石に明らかに不備があるのでしたら止めますが……彼にはそんなに問題があるようには見えませんしね」
(いやいやいや、なんの会話!?)
親子で進められていく会話についていけない野々野足軽は焦ってた。一体二人は何の話をしてるのかって現実逃避をしたいみたいな? 野々野足軽は自分が平賀式部の彼氏に立候補したこともないのになんか既に彼氏みたいなことになってることに疑問しかない。否定したいが、手に置かれた平賀式部の手が強く握ってくるからそっちが気になってしまう。
このまま立ち上がることなんて簡単だ。けど野々野足軽には繋がった平賀式部の手から「我慢して」とか「否定しないで」とかの思いを感じ取ってた。多分だけど、野々野足軽は気のせいなんかじゃない……と思ってる。
それに平賀式部の手の暖かさや、柔らかさ、そしてその小ささにドギマギしてるってのもある。
「それじゃあ認めてるくれるってことですね」
「自由にしなさい」
「はい」
「野々野足軽くん、こんな出来の悪い娘で本当にいいの?」
「いえ、えっと、式部さんはとても素敵だと思いますけど……」
否定しないと……と思ってた野々野足軽だが、なんか気付いたら平賀式部をほめていた。出来の悪いなんて言われたらそうじゃない……と言ってしまいたくなったようだ。それからボーイフレンドのところは否定しようと言葉を選ぶ。
でも、そんなふうに思ってると、平賀式部の母親かこう言ってきた。
「そう、とても娘のこと好きなのね。そこまで言ってくれるのなら信じます。ですが学生ですから、節度を持ってお付き合いしてくださいね」
「わかってます。学生の領分を超えるようなことはしません。そうですよね?」
「えっと……はい」
野乃野足軽がなにか言う前に平賀式部が口を開いて先を制してくる。なんかもうここでは逃れられないなって思ってそういうしか野々野足軽には出来なかった。それから食事はなんとか終わった。堪能したのは野々野足軽の中のアースだけで、野々野足軽自身は味なんてわからなかった。
それからもう帰ろうと思った野々野足軽だが、平賀式部にお部屋に誘われた。気になる女の子の部屋……その誘いを断ることなんて野々野足軽には出来なかった。