「えっと……これは?」
なんか変な手紙を見せられた野々野足軽は困惑してた。それはとても達筆な字でとても気持ち悪い文章が書かれてたからだ。そしてその気持ち悪い文章が書かれてた便箋もとても可愛らしいものだった。一週間分くらいあるのだろう。
その一つ一つとして同じものはない。あるものは可愛らしいウサギが舞ってる。あるものは亀が踊ってる。あるものは花が舞ってる。あるものはシンプルだけど、なんかいい匂いがした。
そんな便箋が一週間分。そしてどれもこれも達筆で全部気持ちわる……ゴホンゴホンと咳き込む野々野足軽。だってもしかしたらこれを書いたのは目の前の平賀式部かもしれない。
当人を前にして気持ち悪い……なんて思ったら失礼だと思った。それにもしもこの文章を平賀式部が書いてて、それを野々野足軽に渡してきた……とするなら……その意図は一体なんなのか。
それを考えると一概に「気持ち悪い」なんて野々野足軽はいえない。
(てかそれなら嬉しいな)
とか思ってた。気持ち悪いと思ってた文章も美少女が書いたとなると手のひらくるくるである。
「それ、最近毎日下駄箱に入ってて……」
「つまりは、ラブレター?」
古風なことを……と思う前に野々野足軽は「許せん!」とか口に出さないけど思ってた。なにせこの文章、気持ち悪い。やけに達筆なのもなんか苛立たせる要因だ。自分よりも字がうまいし……とか全然字の練習とかしてない野々野足軽は理不尽な怒りを覚えてた。
でもあんまり自分が怒るのもお門違い……というかそれをしてるのを平賀式部に悟られると自分の気持ちがバレると思って、努めて冷静に振る舞ってる。
「平賀さんはこれに困ってる……ってことだよね?」
「はい。でもどうしようもなくて」
「確かに……差出人もなければ、告白するからって指定の場所もないもんね」
これはどういうことなのか? 告白するつもりなら、どこどこにきて欲しいとかあるはずだ。それか返事を期待するのなら、自分のラインの番号とかメールアドレスとかなんでもいいから連絡を取り合えるものを載せておくべき……でもそんなものは一切ない。
これが最初の一通目なら、まだ書き忘れたのかな? と好意的に受け取れるだろう。でも一週間分全部にない。
「実は自己満足?」
変な考察を野々野足軽は仕出した。
「どういうことです?」
「つまりはただこの詩? を平賀さんに読んで欲しかっただけとか……」
「でも私のことを書いてるように……いえ、自意識過剰ね」
「いや……」
どう読んでも、平賀式部の事を詠ってる思う……と野々野足軽も思ってた。日常の彼女を謳った詩にしか見えない。だからこれはきっとラブレターなのは間違いないと野々野足軽も、そして平賀式部だって思ってる。けどそれを明らかに口にするのは躊躇われた。
けどそれなら相手の意図が見えない……だからなんか気持ち悪いってなってる。