「存在を書き換える……それにはまず、こいつの体組織からその構造、そしてエネルギーの循環の仕方……色々と知らないとだね」
私はこのアラクネ型砂獣を手懐けようと思ってる。それは自身に対する挑戦でもある。実際、今やそこそこG-01の体を操ることに関してはなかなか出来る様になってると思ってるわけだ。なにせ四六時中やってることだしね。
けどシステム的なことはどうかというと、まだまだ理解してない事が多い。それこそユグドラシルシステムなんてのブラックボックスと言って良い。理解するための知識も足りなければ、知能指数だって足りないだろう。
でも私にはもうアイはいない。いや、いるけどさ……切り離したせいでアレやりたいこれやりたい――って事を内部からサポート出来なくなってる。外部的なサポートしかもう出来ない。
それでもあんまり困らないわけだけど……大体はオートメーションされてるしね。けど、G-01はそれこそ色々……いや言葉さえ選ばなければ何だって出来る。もちろんそれには今のG-01の装備、部品では足りない事もある。でもいまは結構エネルギーに余裕がある。
必要な物はユグドラシルシステムで生み出せばいいのだ。だから今回のこの砂獣を逆に支配するって事も……やれなくは無いはず。
「まずは根本原因的な奴をこの体内から探す」
それはヌメリアさんが産み落とした砂獣の子だ。いやあれは子供なのかしらないが……とりあえずアレが入った事で、コイツラは「特別」になってるのだ。ならあれを見つけるのが、この砂獣を支配するのに効率がいいはずだ。それにアレは教会の仕掛け……あれのせいで教会の支配が入ってるかもしれない。それなら……そんなのはさっさと壊してしまうのがいいだろう。
そうなるともしかしたら普通の砂獣に戻ったり? それは困るけど……とりあえず全身をくまなくスキャンして、私はヌメリアさんが生みだした小さな砂獣をみつける。
「頭にいるってわけじゃないんだ」
確かおじさんの子供に入ってた時は頭に居たはず。そう思って頭を抑えたのに……どうやら居ないらしい。やっぱり人間はその行動を頭が支配してるから頭に居たのかもしれない。そもそもが普通の砂獣には脳みそなんてない。けどもしかしたら、この世界のナニカ……要請とか支配を受信するみたいな器官があるのかも。それなら、そこにいる?
なにせ砂獣は普段は個々で行動してたりするが、戦ってると寄ってくるっていう習性がある。それはどこかに砂獣達で繋がりがあるってことで……それに波が起きると集まるし……そもそも波が起きる要因ってわかってない。それが世界の意思なら……それを受信する器官がやっぱりあるんでは? そこにいる可能性は高い。
「見つけた」
どうやらヌメリアさんが生みだした砂獣は頭ではなくてアラクネ型砂獣の中心部分にいた。とりあえずそいつも周到にスキャンする。するとなんか声が聞こえてきた。
(オギャーオギャー)
――という赤子の声が。