(よかったじゃないですか。距離が縮まって)
(縮まってって……なんかバグってるだろこれ……)
野々野足軽はスマホの画面を見つつ、思考の中にいるアースへとそういった。なにせこの文面から、どういう平賀式部を想像していいのか、野々野足軽はわからないでいる。だってこんな平賀式部を野々野足軽はしらない。こんなキャピキャピな文面を平賀式部が書いたなんて、昨日までの平賀式部しかしらない野々野足軽は納得できないのである。
「これって本当に平賀さんなのか?」
思わずそんな風に野々野足軽はいってしまう。確かに平賀式部はクールに見えて、結構可愛らしいところがあるとは野々野足軽だって思ってる。けどこれは……さすがにここまではっちゃけた感じの平賀式部なんてのは野々野足軽だってみたことないのだ。そうなると……これは本当に平賀式部なのかと疑うのも無理はない。でも実際、他に誰がいるのかって事になる。そもそもが野々野足軽が連絡を取れる知り合いなんて両手で足りるくらいしかいない。そして頻繁にやり取りしてるのなんて平賀式部くらいだ。
それに普通にメッセージを送ってきた相手の所は『平賀式部』と表示されてる。もしもこれで別人だというのなら、ある意味で事件かもしれない。だって平賀式部に成りすました誰か……ということになってしまう。
「やべ、なんか心配になってきた」
そういう野々野足軽はこう返信した。
『えっと、大丈夫?』
『どういう事? ああ、そういうことだね』
(え? 何が――)
「うわ!?」
野乃野足軽のスマホが音を出して鳴った。どうやら平賀式部が電話をかけて来たみたいだ。しかもビデオ通話だ。でもこれで本当にこれが平賀式部かどうか分かる。実際、ビデオ通話を向こうからしてくる時点でなりすまし……なんて線は消えてると野乃野足軽だってわかってる。だってなりすましてるのなら、顔なんて絶対に見せたくないだろう。
けど向こうからビデオ通話をしてきたってことは、なりすましなんてありえない。そうおもって野乃野足軽は通話ボンタを押――そうと思って素早く机の鏡を取って身だしなみを整える。とりあえずは鼻毛が出てないか? とか確認して、ボサボサの髪もちょっとだけ押さえつける。いつまでも待たせるわけにもいかないから、なんとかみれるようにして野乃野足軽は平賀式部とビデオ通話を開始した。
『おはよう野乃野……ううん足軽君』
そう言って画面の向こうで微笑む平賀式部は朝なのにとてもキレイだ……と野乃野足軽は思った。