「それで何のよ−−うわっ!?」
桶狭間忠国は素早く腰を落として野々野足軽の懐に踏み込んできた。しかもきちんと顔を守るかのように両手でガードしつつ、体を丸めてやってきてそしてボディから攻めようとしてきた。それを野々野足軽は何とか交わす。
「何するんだ!」
これには思わず野々野足軽だって抗議する。なにせいきなり攻撃されたんだ。文句の一つも言いたくなっておかしくない。でもどうやら桶狭間忠国は止まってくれないようだ。避けた野々野足軽にさらに迫ってくる。そして今度はジャブみたいなパンチじゃない。桶狭間忠国が本気で拳を握ったら、その瞬間右腕の制服が弾け飛んだ。
「何じゃそ−−ひっ!?」
思わずそんな言葉を出したが、最後まで出る前に桶狭間忠国の拳が迫ってきた。その迫力に、変な声が出る野々野足軽。けどその拳が野々野足軽に直撃することはなかった。なにせ直前で止まったからだ。そして風圧だけが野々野足軽の髪を後ろに押しやった。その恐怖に、野々野足軽は数歩ヨロヨロと後ずさる。
「はっはっは……ゴクッ」
笑うしか出来ない状況だ。激しい鼓動が息を荒くしてる野々野足軽。今の一瞬で、野々野足軽には頭を弾け飛ばされる光景が浮かんでた。しばらくそのままの桶狭間忠国。でもようやく拳を後ろに弾いた。
(これ以上なんてない……よな?)
とかドキドキとしてる野々野足軽だ。でも桶狭間忠国は「フン」というと、今度はまだ無事だった左腕の制服の部分も弾け飛んだ。その音に野々野足軽とはビクッと反応する。
「最初は納得できなかった。なんで君なんだって。僕の方が彼女を守れる。守ってやれる。けど、そうじゃないのかもしれないと思ってる。君にはいろんな違和感があるんだ。
普通の……どこにでもいるやつのようで、そうじゃないような。何かある。今のもそうだ。寸止めすると、わかってなかったか?」
どうやら、桶狭間忠国は野々野足軽のことを疑ってるらしい。何か力を……いやこの場合は実力なのかもしれない。それを隠してるのではないか……と桶狭間忠国は疑ってる。ここはどういう誤魔化し方が正しいのか……野々野足軽は平凡な頭で考える。けど恐怖が刻まされた直後の頭ではうまくいかない。
「例えそうだしとして、それを開示する必要なんてないだろ」
「ああ、そうだね。それも納得できる。格好良くありたいからね。でも……それじゃあ、僕は納得できないんだよ。それじゃあ彼女を任せるなんてできないだろう? だから−−」
そう言って両足を開いてめっちゃ低く腰を落とす。さらに右手を直角に曲げて顔の前に持っていき、左手は尻の辺りに持っていって。何その格好って感じだ。言うなれば戦闘体制……そんな格好に桶狭間忠国はなってた。そして地面を蹴って迫ってきた。
「−−示してもらうよ。その実力を」
どうやら強硬手段……それに桶狭間忠国は出てきたようだ。