ヒタヒタ――ヒタヒタ――
それは暗闇から聞こえてる。扉の方じゃない。反対側の、真っ暗闇……そこからそんな……まるで足音のような音が聞こえてきて、四人の視線がその暗闇を凝視する。何かを見極めようと……いや、けど見たくない――とも思ってるのかもしれない。
だって……いきなり一人が笑い出したんだ。
「はは――あはははははははははは」
それはこんな異常な状況だから、残りの三人はついに発狂したか? と思った。なにせ今は笑える状況ではないからだ。でもそいつは笑ってた。
「もういいよ! もう十分だろ!! ああそうだよ!! 俺のダウジングなんてインチキだよ!! あんなんで何がわかるわけないだろ!?」
そんなことをいきなり言い出してた。そしてまだまだとまらない。
「だからこんなのもうやめろよ!! どうせお前らが仕組んでるんだろ!! 俺の事を笑ってるんだろ!! なにが結界だよ! こんなの効くわけないだろ! オカルトなんてただの思い込みなんだよ!! あるわけない!! ないんだ!!」
「どうしたんだチャブ氏。我々はそんな事思ってなんか……」
「そうですよ。あなたのダウジングは素晴らしいじゃないですかチャブ氏!」
「私の結界が頼りないのはその通り……まだ某は修行の身だからな。すまない」
発狂するダウジングを生業にしてたチャブ氏にみんなが優しい声をかける。いきなりのカミングアウトに失礼なことをいってたが、この状況だ。皆は優しい心を持ちあわせた。
けどそんな言葉も今のチャブ氏にはとどかない。寧ろその優しさが怪しく思える。
「なんなん……なんなんだよ!! 早く『ドッキリでした!!』って言えよ!!」
そんな風に叫んだチャブの顔の横を何かが通り過ぎた。そして次の瞬間、彼の顔に三本の線が入って血が飛んだ。
「あが!? あああああ!!」
「チャブ氏!」
「うわなあああああ!!」
負傷したチャブ氏に駆け寄る者と、その光景にビビッて壁際による者に分かれた。暗闇の中から何かが攻撃をしてきた――それが共通の認識だ。そして赤い血が、彼らに『死』を連想させる。
カチカチ……カチカチ
そんな音が聞こえる。それは壁際によった眼鏡の人の歯が合わさる音だった。
「こんな……ことって……こんな」
そんなことをつぶやいてる。どうやら彼も限界が近いらしい。そんな彼には扉が映った。さっき入ってた来た扉だ。さっきまでドンドンされてたが今は静かなその扉。それが彼には魅力的に見えたんだろう。
ガチャガチャ――
「ダメだ! 開けるな!!」
そんな風に猩々坊主がいう。焦ってる彼はなかなか扉をあけられないでいる。そんな彼に向かってる何かがぶつかる。でもそれは――
バリリ
――という音とともに、防がれた? それに一番ポカンとしたのは扉を必死に開けようとしてた彼自身だった。