「何か来ました!!」
「慌てずに障壁を展開」
そんな風に目隠しの聖女様が言ったことを教会のローブの連中が忠実に実行する。それによって放たれた矢が不可視の壁によって阻まれる。
「浅はかな」
そんな言葉を彼女はボソッとつぶやいた。そして背中を向く。多分もう脅威になりえないから、とりあえず中に引っ込もうとしてるんだろう。彼女はかなり偉そうだからね。態度が……ではない、むしろ態度は教会の奴なのにかなり丁寧である。
あれでかなり上の立場にいるだろうから、ずっと現場にいるのも彼女的には周りが動きにくくなってしまう……と判断したのかもしれない。実際生き残ったドローンで観察してる私も、あの人には引っ込んでもらいたい。
だってエネルギーを観測するに、あの目隠ししてる聖女……ここにいる全員の一般兵であるローブの奴らを足したのよりもエネルギーを内包してる。
それでもはっきり言って、私から見たら雑魚でしかないが、でも普通の人間からしたらありえない――と思えるほどの力を彼女はもってるのだ。きっと彼女が魔法を放ってきたら、いくらレベルアップしてるこっち側の兵士たちも無事ではすまない。
いや、下手したら一撃でこっちが壊滅する可能性もある。てかいざとなったら、その手があるわけで、なにか対策をした方がいいよね。
「なくしたドローンも少しずつ補充出来てるね」
私は各地からここザンサンシャカレへとドローンを集めてる。そしてそれらは隠れながら、あることをやってるのだ。このままだと最悪、奴らはあのダンゴムシをザンサンシャカレに突撃させることで、目的を達成することができる……できてしまうのだ。
実際の所、教会の目的はザンサンシャカレの都市核であって、この町、そしてここに住む人たちはどうでもいいと思われる。だから最悪それをする可能性は十分にあるのだ。
そしてそれがあるっていう選択肢……それが脅威なんだよね。だからそれをできなくするために、ドローンを使って装置を転送することにした。そしてそれでザンサンシャカレを覆って、簡易結界的なものを展開する。私たちにとっては簡易なんだが、それでもきっとあのダンゴムシの突進には耐えられるほどの強度はある。
そういうの。それを今、必死に隠れてドローンたちはやってるのだ。なのでなんとか結界の準備ができるまでは教会側を兵士たちの方でとめててほしいんだが……遠距離攻撃も止められたからね。
けど……
「風を吹かせなさい!」
何やら焦ったように目隠しの聖女がそういった。どうやらあの矢の二段階の構えに気づいたらしい。