「えっと……実は昨日俺たちは――ふぐっ!?」
「え? 何かあったんですか!?」
キラキラの目をして興奮してる草陰草案。けどそんなキラキラとしてる草陰草案とは反対で何か言いかけたアンゴラ氏はわき腹を抑えて前傾姿勢になってしまってた。
「お前ら……」
「それは許容できんぞ。あんな女子を巻き込むなど」
「そうですよ」
アンゴラ氏が昨夜のことを草陰草案へと告げようとしてると判断した猩々坊主は素早く彼のわき腹に肘鉄をかましていた。そしてそれによって苦しんでる。どうやらふたりは昨夜のことを彼女たちへいうのは不味いと思ってるみたいだ。
アンゴラ氏が伝えてもいいと思ったのは、彼が唯一対抗できる力を持ってるから、他の二人よりも余裕ってやつがあるからかもしれない。
「どうしたんですか? 何があったんですか!?」
そういって草陰草案はスマホにマイクをつなげて、記者のようにおっさんたちに向けてくる。どうやら不思議なことが起きたらしいことがうれしくて溜まらないらしい。
「残念だが、何もなかった。今こいつは実は何もなかったと、ここはただの荒らされた廃墟だった……と言いたかったんだ」
「そう……なんだ……」
明らかにがっくりとする草陰草案。そんな女子中学生の反応には、おっさんたちもちょっと心を痛める。なにせ本当にウキウキとしてたからだ。でもしょうがない……と彼らは心を鬼にする。
なにせ昨夜の出来事は、大人であった彼らであっても恐怖に支配されてしまった。もしも……もしもだ。もしもアンゴラ氏がその力を覚醒させなかったら、彼らもどうなってたのかわからない。
そんな危ないことに子供を巻き込めるわけがない……というのは普通の大人のあたりまえの対応だろう。
「もう帰ろうよ」
そんな風にただ付き合わされてるだけみたいな野々野小頭が言ってくる。それに対して草陰草案はまだ諦められないようだ。
「いや、私の勘がここには何かがあるといってる。それに……」
草陰草案は「あははは」となんか怪しい笑いを浮かべてるおっさんたちをみた。さっきは彼女は「そうなんだ」といったが、その前のアンゴラと呼ばれてる人の言葉を思い出すとおかしなことに気づいた。
(さっき昨日ってあの人はいってた。つまりは昨日もここに来たってことじゃない? なのにまたここにいるの? 今は何もなかったっていってた。でも何もないところに二日連続で来る?)
そんな疑問だ。なので草陰草案はまだここを調べたいとおもってた。
「もうちょっと見て回ろうよ。だってせっかく来たんだからさ」
「危ないでしょ」
「そこはほら、私たちの事、守ってくれますよね?」
そういって草陰草案はおっさんたちにお願いしてきた。そもそもがあまり女性経験が少ないおっさんたちである。女子中学生にそんな事を言われたら、放っておくなんてことできなかった。