「あれは、病室でオカルトちゃんねるを見てたときだった」
なんかキラキラとした回想の入りをする草陰草案。どうやら草陰草案にとってはその瞬間がとても感慨深い思い出になってるんだろう。それを否定するつもりもない野々野小頭は「さっさと要点だけいってくれないかな?」とか思いつつも何も言わずに話を聞くことにした。
「私は動画を見つつ、時々顔につけたガーゼをかいてた。でもね、なんか痒いのがおさまらなかったの。だからガーゼをとってカリカリしてたら血が出てきた」
「ちょっと何やってるのよ」
野々野小頭はもっと自分を大切にしなさいっておもってるみたいだ。なにせこんなでも草陰草案は女の子である。顔に傷が残ったりしたら、困るだろう。それを友達だから、野々野小頭は諌めてる。
「大丈夫大丈夫、もう傷とかないから。ほら」
そういって見せてくれたその場所には確かに傷なんてない。十代の綺麗な肌しか無い。
「それで?」
「流石に血が出たら怒られるかな? って思ってまずはテッシュで拭いたんだけど、なかなか止まらなくて、どうしようかって思ってたら、ポッケにいれてたあの石を握ったの。そしたらね……なんか暖かくて……なんだろうっておもって取り出して見てたら、なんか血がなくなってた。いや違うね。なんか傷がなくなってた。それでもしかしたらって思って、今度は腕のガーゼを取ってそれでやってみたの」
「で、傷がなくなったと?」
そういう流れだよね? って感じで野々野小頭は口をはさむ。けどそれに対して、草陰草案は首を横に振った。
「ううん、なんにもならなかった」
「え? じゃあその石は関係なかったってこと?」
「ううん、そうじゃない。私もどうしてかなって思ったし、何かの間違いかともおもった。けどね。そんなわけない。だって本当にさっきあった傷がきれいさっぱりなくなってたもん。絶対に何か「力」が働いたんだって私は思った」
実際、その現場をしらない野々野小頭は「気の性とか思うのでは?」とか考えるが、草陰草案は絶対になんらかの「力」が働いたって思い込んだらしい。
「だから私は治りかけた傷を更に傷つけて血を流した」
「馬鹿なの?」
「だって腕の方はもうほぼ治ってたし……でも大丈夫そのおかげで、力がわかったからね。やっぱり血が出ると石が光って、傷を塞いでくれたんだ。これはもう確信したよ。私には特別な力があるってね」
「いや、それはその石に特別な力があるよね? 草案ちゃんには無いよね?」
「やっぱり私は特別だった……ふふふ、ふふふ! すごくない!! 私すごくない!?」
どうやらテンションアゲアゲな草陰草案には野々野小頭の常識的な言葉は届いてないらしい。