ざわざわと路地に人が集まってる。仕事を終えて、風呂にも入って、仕事終わりに街に繰り出してるたくさんの人たちの一部でその騒動は起こっていた。
「何があったんですか?」
先に野次馬になってる人に対してそんな風にきく。楽しい気分に水を差された感じだし、何やら嫌な予感? というものがしたのだ。たださっきまでとても気分良かったから、こんなことは見て見ぬふりをして、街の食い物やら飲み物やらを仲間たちと楽しんだって全然よかっただろう。
そっちの方がきっと気分よく明日を迎えることができたはずだ。見なくたって、別に何の関係なんて彼らにはない可能性が高い。なにせこの町には来たばかり……誰にも恨みを買うなんてこともまだ起きようはずもないんだ。
だから自分達には関係ないと割り切れたはずだ。でもなんとなく彼らはその野次馬に興味をもった。
「どうにも結構酷い死に方してたらしい」
「殺し……ですか?」
「この町で飢えなんてないからな……自殺じゃないのなら、そういう事になる。あんたたち、外から来た人たちだろ?」
「ええ……」
そんな彼らを鋭い目つきでその人は見てくる。けどそれも一瞬ですぐに柔和な笑みになった。
「気をつけな。ここは比較的安全だが、それでもこんなことは普通にあるんだからな。一人にならないこった」
「そうですね。気を付けます」
素直に彼はそう返した。普通に心配してくれてる……と思ったからだ。奥の方は沢山の憲兵がいてよく見えない。けど何やら馴れてるであろう彼らの空気は重そうだった。
もちろん、話を信じるなら人死にが出てるのだ。軽口を叩きながら処理できるはずもないだろう。でも……それだけじゃないような……そんな空気だと感じた。
けどそれを関係ない彼らまで引きずってても仕方ない。それに繁華街の方に戻ると、相変わらずのにぎやかさで、事件のことなんてすぐに忘れてしまった。
それから数日……毎日仕事終わりに仲間たちと飲みに出てるわけだが、次第にその視線が気になるようになってきてた。なにせ彼らが街に繰り出すと周囲の人たちが見てる……ような気がする。そして何やら、元からアズバインバカラにいた人たちが避けてるような? そんな気がしてた。