「あれ?」
「なんだ?」
「どういう事?」
何やらざわざわとしだした皆さん。それもそうだろう。なぜなら、いきなり周囲が暗くなったからだ。この世界、夜もあるにはある。明と宵という二つの時間帯があるわけだけど、太陽といっていいのかわかんないが、空に浮かぶそれが陰っていって、そして見えなくなるまでの時間に夜ができる。でもそんなに長くはない。せいぜい数時間である。
それにこんなに一気に暗くなるってこともない。だからこそ、誰もが困惑してる。そして皆が空をみた。折角勝ちどきを上げて気持ち良くなってたところでこんな暗くなったらテンションも下がるというもの。それに普段ならこんな風にならないはずの時間でこんなことが起こってる。
それによって人々には不安が広がるのも無理はない。
「あれをみろ!!」
「なんだあれ……」
「太陽が……隠れてる」
「あれは一体……」
そんな声がそこかしこで聞こえる。あんな現象を見たことがないのだろう。なにせこの世界、あれが起こりうる形をしてない。何が起きてるのかというと、日食とか月食に近い現象だ。宵には太陽は完全になくなってしまう。それと同時に世界は完全な闇になる。
でも宇宙というくくりに内包された世界では、夜は見えなくなるだけであって、なくなったわけじゃない。でもこの世界では完全な消失、そして再生が行われてる。
だから……だ。だから、あんな現象が起こることはない。なにせ月とかないし、実際太陽というバカでかい質量を保有してる星があるわけでもないのだ。
なのに……今、太陽は隠れてしまってる。太陽の前に出て来た何かが太陽を隠し、その輪郭だけを怪しく光らせてる。それはまさに空に掲げられた、指輪のよう。
なにが始まるのか……そんな不安が皆を襲ってる。それにそれは私たちも同じだ。まあ何がきても大抵のことは何とかできる……と思う。でも手伝いはするが、決着はこの世界の人々の手によって……とは思ってる。
ビービービー
何やらそんな警報がコクピット内に響く。それはこの世界に沢山展開してるドローンからの警報だ。それが報告してくる。このアズバインバカラへと、教会の軍勢が迫ってきてる……とね。