(不思議な感覚だ)
そんな事を一人の兵士は思ってた。彼はこの戦いの為にわざわざ志願した青年だった。本当なら戦うなんて……そんなふうに思ってた一人の少年だ。
彼はアズバインバカラでそこそこの家に生まれた。もとからこの世界では比較的に安定してたアズバインバカラだけど、その中でもまだG-01たちが来るまでは例に漏れず貧困に苦しんでた人達だってそれなりにいた。なにせ……だ。なにせ物資が足りないのだ。幾ら要請しても、教会は支援物資を出し渋ってたし、アズバインバカラのすぐ近くのジャルバジャルは波によって砂獣によって砂の下に沈んでしまってた。
けどそんなときでも彼の家はまだ食べ物に困る……ほどではなかった。つまりはかなり恵まれていた家の生まれだったということだ。そんな彼はG-01たちが現れて、段々と世界の情勢が地上の人達と教会で分かれて行ってたときも、まだまだ好き勝手に生きてた。
いや寧ろ、その自由気ままな感じがマシてた……といっていい。なにせ、G-01たちが来たおかけで、色々と余裕が生まれて来たのだ。そして王の帰還。帰還というか、王が新たな王都をここアズバインバカラへと定めた。遷都したと言っても言っていい。
そうなるとアズバインバカラがこの世界の中心である。少なくとも地上の人達はそう思う。そしてそうなると、色々と活性化する。それにG-01たちのへんな技術……それらも合わさって生活は安定して、仕事も増えて、そうなるとさらなる感じで裕福に彼の家はなっていた。
けど彼は家にただいることは出来なかった。なぜかというと、彼は三男だったからだ。だからこそ気ままではあるが、家を次ぐのは長男である兄である。
「何をやって生きていこうか?」
そんな事を彼は思ってた。ただ楽しく生きていきたい……賞金稼ぎなんのはもってのほか。砂獣とたたかう何て……命をかける……なんて馬鹿のやること。そう思ってた。けど今は彼はその生命を賭けて戦ってる。
それはある出会いをしたからだった。アズバインバカラには沢山の街の人達が集まってきてた。そんな中には勿論だけど女性だっている。
そんな中の一人。隻腕の女賞金稼ぎに彼は脳を焼かれたのだ。それはいつものように町中を我が物顔で仲間と歩いてたときだった。その時はちょうど、このアズバインバカラに他の街から沢山の人達がやってきてて、そして殺人事件が起きて色々とピリピリしてる時だった。
彼らは自分達の街を守るんだって、歪んだ正義を振りかざして、別の街の人達に暴力を振るってた。勿論だけど、賞金稼ぎ風の奴には手を出さない。あくまで狙うのは一般人だ。そして自分たちよりも弱そうな奴らを狙ってた。
そんな感じで日々の退屈さを紛らわしてた彼だったけど、そんな時に彼女に殴られたのだ。
「クズが……」
それが彼が彼女から受けた第一声だった。そしてゴミを見るような目を向けられた。勿論怒った。自分はちょっとした権力者なんだと喚いた。だけど彼女にはなんの意味もなかった。
ただ普通に近づかれて腹を殴られて、足蹴にされた。
「げぼおおおおおおお!! がはっ――ごはっ!?」
腹の中身をぶちまけつつ、這いつくばる彼はギロリと恨みがこもった瞳で彼女を見た。そしてこういったんだ。
「ぜってえ……許さねえからな!!」