殺されることはなかった。当たり前だ。なにせあれは訓練だ。こっちは殺る気満々だったが向こうにはそんな気は一ミリだってなかった。だか俺が許しを請うたら簡単に許してくれてた。勿論その後、俺は周囲からさんざん馬鹿にされた。幾ら強くても情けないやつ……そんなレッテルが貼られた。
軍にも居場所がなくなった。そんな俺は軍を抜け出した。勿論そんなのは罰の対象だ。下手したらそこそこの重罪。まあ流石にただの新兵である俺が貴重な情報を持ってるわけもないから、ただの退役にでもしてくれるだろう。
そんな想いがあった。けどちゃっかりと武器は持ち出してた。それを使って巷で俺はやりたい放題してる。勿論犯罪ではないが、やんちゃな奴らをしばいていって、駒にするって事をしてた。
なにせ実家にも帰れない。俺は親父の顔に泥を塗ったんだ。これでは帰った所で勘当されることはわかってる。それならば、帰らずに勘当も言い渡されていないこの状態が都合が良かった。なにせ、家の名前が使えるからだ。
そもそもが軍の寮に居た俺はそんなに金はなかった。あくまで買い食い出来る程度の賃金しか出てなかったのだ。そもそも軍の寮の中で衣食住は完結できる。だからこそ、訓練兵に支給される賃金は最低限だった。
そしてそれをすぐに使い切ってた俺には金なんてあるはずもない。だがらこそ、暴力と家の名前をつかった。暴力で手下を増やして、家の名前で無理やり拠点を借りたのだ。
けどだからって好き勝手にしすぎると、目をつけられる。今まででのような好き勝手出来る生活かと言われるとそんな事は全然なかった。寧ろ……だ。寧ろ余計に心休まることなんかなかった。
なにせ周囲の誰もが俺を笑ってるような気がする。そしていつ追ってが来て軍か、それか家に連れ戻されるのか……それが怖くてしかたない。手下共には横柄に接してるが、寝れないイライラと、恐怖……それが相まってすぐに暴力を振るってしまう。いなくなるやつはあとを絶たない。
俺のかわりに外に出て食い物を持ってくるやつが必要なのに、そんな必要な奴らを自分でボコボコにしていつの間にかどこかに行ってしまう……なんて事をやってしまってた。
だからって外に出ると周囲が怖い。笑われてると思ってしまう。どうやら俺は、普通の人よりも心が弱いらしい。それを自覚して、もっと外が怖くなった。
強いはずなのに……町中ではそうそう負けるなんて事はないとわかってるのに、怖いものは怖いんだ。もしもあの勇者と出会ったら? 親に勘当されたら……もう俺はおしまいだ。
それでも食わないと生きていけない。俺は夜を狙って出歩いては夜な夜な屋台に強盗を仕掛けてた。
なにせ人が急激に増えた。そのせいで飲食店とか色々な店が沢山増えてる。それらの建物の建築は間に合って無くて、路上に出店できる屋台がとても多くなってる。
それらは個人でやってるのが殆どだ。そんな個人の店を襲えばリスクも低い。とてもいい目の付け所だとおもった。
そして実際それは上手くやってた。そうその日までは……