uenoutaの日記

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転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 998

 おわり……二人共、次のやつの魔法で殺される。すでにいくらか切られてる俺には避けることなんてできない。けど……それでも歩みはとめなかった。
 最後まで生きることを諦めない。俺一人なら、ただ命乞いをみっともなくしてたと思う。きっとこれは俺の意地だ。最後くらいはこいつに格好いいところを見せて置きたいという……そんなちっぽけな意地。
 
 それで実際女の評価がどうなるかの……なんて俺にはわかんない。けどそんなのはもう……どうでもよかった。ただ最後まで意地を張りたい……その気持だけ。
 寧ろ、複雑なことなんて考えられない。地面で繋がる血の線……それは俺だけのものじゃきっとない。背中に担いでる女も、その息は荒い。致命傷じゃなかったとしても……俺たちは互いにそれなりの血を流してる。
 
 足は気合で動かしてた。すでに感覚なんてない。殆ど上がらない足を、引きずるようになんとか前に出してた。きっと俺が思ってるよりも、全然距離は稼げてないんだろう。
 不穏な空気が後方に流れていってるのがわかる。それはきっと確実に俺たちに死をもたらす……そんな確信が嫌でもあった。
 
「なんでこんなやつと……」
 
 きっと女はそんな風に思ってるだろう。なにせ俺たちは今日出会った……訳じゃないが、知り合いに成れたのはきっと今日だ。そんなやつとともに死ぬ? そんなのきっと望んでなんてない。
 
「すまない」
「なにが……?」
 
 どうやら俺はいつの間にか口に出してたらしい。しまった……とおもった。だから「いや……」とかいう。もう俺たちはきっと後ろのことなんて気にしてなかった。
 あとどれくらい生きられるかわからないのだ。ただ俺たちが感じられるのはきっと肌を触れ合わせてる互いだけ。それは別にいやらしいことなんて一切なくて、人肌のぬくもりが互いに『生きてる』ってことを伝えてくれてる……ということだ。
 
「何を気にしてるかしらない……が、覚悟はいつだってしてる。だからいつだって……後悔なんてしないように……」
 
 口ごもる女。こんな世界だ。死はいつだって身近にある。そして女は賞金稼ぎ。その生命を投げ売って砂獣に挑む者たち。だから普段から死はずっと感じてたんだろう。
 でもそんな女が口ごもった。やっぱり後悔なく生きるなんて……そんなのは不可能だ。今日を生きたら……明日だって……と思う。明日を生きたら、また明日だって……と思ってしまう。それが人間だ。けど女は次の後の言葉を紡いだ。覚悟を口にするように。
 
「ああ、そうだ。これもきっと意味がある」
「意味?」
「私達は……無駄死になんかじゃない」
 
 そうだろうか? そうだといい。俺は人のため……他人のためなんて思ったことはない。けど今は始めて、そうだといい……と本当に思ってる。
 
 その時――
 
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
 
 ――と地面を……壁をえぐる無数の音がきこえる。その音は確実に迫ってきてる。俺たちは立ち止まって、目を閉じた。