それは単純明快。ドラゴンはただ速い。まるで風のように……
「そういう事か……」
あれはもともと風の少女だっだ。そしてその翼には常に風が宿ってた。あのドラゴンはきっと風を……スピードに特化してるドラゴンなんじゃないのか? と野々野足軽は思った。スピード特化の割には別に細いとも思ないがっちりとした姿をしてはいるが、そもそもが見た目なんてのは関係ないのかもしれない。ドラゴンという姿になってるが、その重さとか、質量的なものはもともとがない風の少女であった。なら、あんな風になったとしても、重さ――なんてのはないのかも。
「それにしても――」
速すぎる! 実際視界でとらえるというのは難しい。あれだけデカいのに、ほぼ見えないのだからその速さは相当だ。バサバサなんて感じではなく、まさに弾丸のようにあのドラゴンは体をなるべく縦に細くして動いてる。そんな恰好で飛んでるから、直線しか速くない……とかあればよかったんだけど、残念ながらそんなわかりやすい弱点はない。
やっぱりそこも元が風の少女の影響があるんだろう。そもそもが風なんだ。飛ぶなんてのは呼吸をするようなもので、そこにわずらわしさなんてのは微塵もない。だからこそあんな体を縮こませて細く成ってるのに速い。あれで速いとかわけわからんって感じだが、きっと風にそんなのは関係ない。ドラゴンなんだけど、けど風。風の少女とかは攻撃力とかなさそうたったのに、ドラゴンへとなったことで凶悪な爪やら牙を得て、ただ突っ込んでそれらを振るだけで脅威になってる。なにせ見えないし……もしも自分が……と野々野足軽は考えて身震いする。
「体自体が向こうにあったら今頃……」
なにせ結局この力を生み出してるのはこの野々野足軽自身の体なのだ。だからこそ、その体から出てくる力を完全になくすなんて出来ない。
いや方法があるのかもしれないが、今の野々野足軽には出来ない。そもそもそんな必要性がなかったし。一部分から力を剥がすというのも今回やむにやまれずにやってみたから出来ただけ。
そこから力を取り除くなんてのは、できるか出来ないか……じゃなくもっと単純な理由があった。
(この力がなくなるなんてこと……)
もしも一回全部封じ込めて……それがもしも、万が一戻ってこなかったら? それが野々野足軽は怖かった。