「ふん!」
一瞬にして眠気が最高潮に達して意識を手放しそうになった時、桶狭間忠国はその拳を地面に打ち付ける。
ズン!!
――と一瞬ちょっとだけ地面が揺れる。そして彼の拳はアスファルトへと刺さってた。信じられないことだ。ただの拳でアスファルトを砕く。瓦ならまだわかることかもだけど、地面であるアスファルトとなると話は別だ。
けどもちろん、彼の拳だって無事ではない。その拳は血が出てる。けどそれが彼の狙いだったようだ。
「流石にこれだけの痛みなら、寝てられないみたいだな」
「あんた馬鹿じゃないの」
「それに……もう一度言えばいいだけよ」
「は……はははははははは!」
「いやーすみませんね。病院についてきてくださるなんてありがたいことです。こんな美しい女性に心配されて、怪我したかいがあったというものですよ」
「なにを……」
「いやーありがとうございます!」
怪我なんて何のその。桶狭間忠国は今言った事を押し通す気のようだ。自分から怪我して無い方の手で悪魔憑きの女性の手を取って、歩き始める。困惑してるのは悪魔憑きの女性だけじゃない……けど桶狭間忠国は有無を言わせないように引っ張る様に歩いてる。
どうやらまずは朝倉先輩からこの女を遠ざけるつもりのようだ。そしてややごういんだけど、自分は怪我をしてるとアピールすることで病院に急いでる風を装って桶狭間忠国が彼女を引っ張ってるのを周囲に納得させてる。
まあ納得してるのかはわからないが、『理由』がちゃんとあると思ったら、多少無理矢理でも人は介入しづらくなるものだろう。実際桶狭間忠国の手の怪我は今も血がポタポタとしてるくらいにはひどいし。
「えっと……」
困惑してる朝倉先輩。桶狭間忠国はそんな朝倉先輩に何も言わずにただ悪魔憑きの女性をつれていく。
「なんなのよ……もう」
そんな風につぶやくしかなかった朝倉先輩だった。