「よし、このくらいでいいでしょう」
「あっそ、もういいんだ?」
桶狭間忠国は悪魔が取り憑いた女性を引っ張ってもっと人気がない場所までやってきた。桶狭間忠国はパトロールを兼ねてこの町を頻繁に回ってる。だからこそ、穴場的な場所はよくわかってるのだ。駅から近いけど、ビルとビルの間、荷物が置いてある小さな空き地……よく売人とか怪しい奴がいるが、それも夜の事。昼間ならそこは誰もいなかった。
「貴方は一体何者ですか?」
そんな風に桶狭間忠国は今更な質問をした。けどそれは桶狭間忠国にとっては大切な、そして必要な質問だった。確かに目の前の女性は見た目はただの綺麗な女性だ。きっと大体の人は彼女の事を美人だというだろう。まあ桶狭間忠国は「好みじゃない」と思ってるが……
「そんな事より、こんな場所でいいのか? 逃げ場なんてないぞ。それとも殴るのか? その自慢の筋肉で? 女である私を」
そういって体をしならせる悪魔付きの女性。ここで桶狭間忠国が手を出したら……いや手を出さなくても、彼女なら事実を捏造するなんてことは造作もないことだ。なにせ彼女は女であり、そして美女だ。こんな路地裏で誰も見てない中、彼女がその細いのどから甲高い声を上げたらどうなるか? それを桶狭間忠国は考える。
「この状況、お前は有利な所に来たつもりなのかもしれないが、それは間違いだ。誰かがいたから私はやりたいようにやれなかった。けどここはどうだ? 誰も見てない。それはお前が暴力を奮うのに有利なのか? 違うな……この状況は私にとって有利なんだよ」
そういった悪魔憑きの女性は大きく息を吸い込んだ。まるでこれから大声を出す準備をしてるかのように……
「きっ――――」
その瞬間、桶狭間忠国はうごいた。利き腕はアスファルトに打ち付けて繊細には動かせない。だからこそ逆の手で女性の細い首を掴んだ。それだけで彼女は声を出すことはできなくなって、さらには「かっは――」と息もできなくなってる。とっさの事だった。確かにこの状況、桶狭間忠国に有利じゃなかった。
人は信じたい方を信じる。美女と野獣ならどっちを信じるか? という事だ。誰かが見てたら、弁明をしてくれるかもしれない。けど誰もいなかったら、きっと誰もがこの美女のいう事を信じるだろう。当然だ。だって相手は美女だからだ。それを思った桶狭間忠国はとっさに声を出させないように首を絞めてた。これはもう言い訳もできない。
苦し気にしてる彼女……早く開放しないとやばいだろう。そんなのは桶狭間忠国だってわかってる……なのに……
「腕が……」