ファイル1 某日取り締まり室内での出来事――
何があった? 覚えてることを全ていってくれ。
『わかんないですよ。記憶が曖昧なんです。あの日のことは……本当に。気づいたら……ぼうってしてきて……ごめんなさいごめんなさい』
ファイル2 某主婦
貴方はあの時、何をしてたのか記憶はありますか?
『はい、いえ……良くは覚えてません。気づいたら……その下腹部にあれが……服もなくて……でもそんなのは全然気にならなくて……ただあそこには楽園があったんです』
ファイル3 某観光客
貴方はどうして……あんな事を? 貴方は貴方の手はいまでもその後遺症で……
『スミマゼン……ゴベンナザイ……でもあれは……僕の意思じゃ……ながった……誰かがいったんだ。ぼぐの……悪口を……』
後日、そんな沢山の人の人生が狂った日。野々野足軽は見た。その惨状を。もっと早く教えてほしかった……と思うのは酷だっただろう。きっと天使っ子も悪魔っ子もどういったらいいのか……それがわかんなかったんだ。
それに最初はそれこそこんなではなかったと思われる。きっと何やらおかしいな? 程度。悪魔とすれ違うと様子がなんかちょっとおかしくて、足取りがフラフラしだした……程度。
それにきっと悪魔だってそれに関心なんてなかった。悪魔というか悪魔に取り憑かれてる女性だろう。彼女の意思が強く出てるからきっとその取り憑かれてる人の人格が強く出てる。
けどその体にはもう悪魔の力が馴染んでる。だからこそ、心が安定してないせいでその体の力が周囲にまでもれてたようだ。道路を歩いてた人とか、ぎょっとしてしまう。学生とか面白がって写真を撮る人だっていただろう。
『痴女なう!!』
なんて投稿だってあった。一応顔は隠されてたけど、その裸体は完全に上がってた。けどそれをやった人もすぐに悪魔の力に侵される。意識が遠のいて、その時の欲望? が強くでる。彼は襲いかかった。隣にいた。友達に。
ちなみにいうと女じゃない。男である。同じ様なことをしてた学生の友達も同じ様な慾望が強く出たんだろう。四人のグループは絡み合ったりしてた。
ある人はスマホを操作しながら歩いてた。その人は猫動画を見てた。すれ違いざまに「あれ?」と思ったけどそれだけだ。意識もしなかった……でも彼女もその力に当てられた。その人は猫になった。猫になって塀に上がって屋根に飛び移ろうとして地面に落ちた。けど正気に戻らない。
そんなおかしな人達がどんどんと出来上がっていく。そしてただ悪魔の女性に付き従うようにする人たちも増えていき、集団になっていってた。まだ正気の人を襲ってる人たちまで出てる。
これはとんでもないことだ……とんでもないことになってしまってる。それを野々野足軽はすぐに理解した。