「くっ……視界が……皆さん気を付けてください!!」
桶狭間忠国がそんな風に声をあげる。やっぱり戦いなれてるからなのか、桶狭間忠国の反応は早い。黒い靄がこの駅構内を覆いつくすほどに広がって一気にライトの明かりとかも見えなくなる程に真っ暗闇に包まれる。いやそれだけじゃなかった。一体どこからこれだけの闇が沸いたのか……と思えるほどだが……
「なんだこれ?」
(おかしいおかしいおかしい)
――と。だって流石にこんな闇……ありえるだろうか? 確かに昼も過ぎてたし、そろそろ夕暮れ……が近づいてただろう。でも……まだ日はあったし、なによりも駅構内はそれこそ電灯はいっぱいあるだろう。それらすべてがみえなくなる? それだけじゃない。周囲に誰の気配も桶狭間忠国は感じなくなってた。
そこそこ近くにはアンゴラ氏がいたし、少し離れた所には野々野小頭達がいたはずだ。こんな闇の中なら、誰かがスマホのライトをつけてもおかしくない。けどそんなのない。いや、もしかしたらライトをつけたら狙われるかもしれないと思ってつけてないだけかもしれないが……と桶狭間忠国は考えた。
「そうであってほしいな……おい、誰か! 聞こえるか?」
確かめるためにも、桶狭間忠国はその大きな体を生かしてて、かなりデカい声を出した。それこそ駅構内中に響き渡るような声だった。でも……その声に反応する声は返ってこない。ただ自然と闇に溶けるように桶狭間忠国の声は消えていく。
「おい! 誰か! だれでもいい!! いないのか!!」
桶狭間忠国は軽く走りつつ、周囲を見回しながら声を上げる。その時、ズキッと痛みが腹のあたりに走った。
「くっ……流石に完璧には治せてないか……いや、今動けるだけでも凄い事だ」
痛みが鈍く走る部分を抑えながら、闇の中を進む。そして桶狭間忠国はここがやっぱりおかしい……と判断した。
「こんなまっすぐに歩いてどこにも当たらないなんて……どこなんだここ?」
駅の構内だったら、実際、広いといっても、すぐに店舗とかにぶつかったりするだろうし、改札とかだってあるはずだ。でも……ない。ここには……この闇には何もなかった。
「これはきっとあの悪魔の力……飲み込まれたのか? 僕だけ? いや、皆か?」
そうつぶやきつつ、考えをまとめようとしてる桶狭間忠国。するといきなりだ。目の前がカッ! とはまぶしくなった。そして聞こえるエンジン音。さらにはギギィィ――と聞こえるブレーキの音。でもそれは……目の前のトラックは止まりそうにない。
(これは!?)
その瞬間、桶狭間忠国は過去を思い出してた。